うだるような暑さを少しでも和らげようと、バッグに一つうちわや扇子を忍ばせている方もいるのでは? うちわや扇子が起こしてくれる柔らかい風は、扇風機やクーラーといった人工的な風と違い、私たちを程よく癒してくれます。
私も、外に出るときはお気に入りの扇子を一本バッグに忍ばせているのですが、涼を求めるだけでなく、広げて仰いだ時の独特の香りによく癒されています。仰いだ風に載って、かすかに香る独特の香り……。あれは、扇骨に香りのよい木を用いていることが多いそうですよ。
有名なのは「白檀(びゃくだん)」を使用した「たんしゃん扇」。木材自体からとてもいい香りがし、仰ぐごとにその香りが私たちに届く、というわけですね。
そんな「香りのする扇」からインプレッションを受けた、新しいルームフレグランス「かざ」。扇の形状をした今までにありそうでなかった和フレグランスです。さっそくその素敵なアイテムを見ていきましょう。
その扇子のかざに誘われて
「かざ」は、「香り」を意味する京ことば。その製造をすべて京都で行っており、オールメイドイン京都のルームフレグランスです。
ディフューザーというカタチで生まれた「かざ」の特徴は、その「保香性」。扇子用に薄く加工された竹は、長く香りを保ち続ける性質を持っています。その香りを保つ力が高い扇骨(竹)の特性と、京扇子の加工技術を組み合わせ、「かざ」は生まれました。
ディフューザー用のスティックには、先に挙げた、白檀扇子を使用。お部屋に置くだけで、ふわりといい香りが漂います。
よく見る竹串のようなスティックとは違い、細かな文様が施された扇骨加工だからこそできるこのニュアンス。すき間から光がこぼれ、インテリアとしても映えそうです。
種類は「玄(くろ)」「翠(みどり)」「素(しろ)」の三種類。それぞれ清水焼と、色を合わせた扇がセットになっています。いずれも100mlの香料が着いています。
玄(くろ)
「玄」は、黒茶色の清水焼と黒染めの扇がセットになっています。イメージは華やかかつ妖艶な花街のしっとりと濡れた石畳と、ゆらぐ提灯の灯。そえられた白檀の香りは、上品でやさしさに満ちた艶のある香りです。
翠(みどり)
「翠」は、新緑を思わせる若葉色の清水焼と、穏やかで涼やかな茶染めの扇。静かな森の木漏れ日と、たっぷりの緑の中に吹き抜ける風をイメージしたんだそう。深呼吸したくなるような檜の香りです。
素(しろ)
そして「素」。やさしくクリーミーな乳白色の清水焼と、白竹の目にも明るいカラーリングです。春の訪れを感じるかのように、うららかな川べりの散歩道を歩けば、桜がぽつぽつとほころび始めている……。そんなシーンをイメージした、八重桜の香りです。
それぞれの香りは変更することもできますよ。自分の好みに合わせて、白檀、檜、八重桜から選んでくださいね。
古き良き、そしてあたらしき京都を創り上げる
「扇子」の起源は、平安時代初期までにさかのぼります。当時は扇子に和歌をしたため、香を焚いて香りとともに恋相手に贈っていたのだとか。
扇子のほかにも、京都には長い年月をかけて蓄積された工芸技術が多くありますが、現代の生活様式の変化により、そのニーズも変わっていく……、といったこともあります。そこで、昔は当たり前だった工芸の存在意義を、あえて現代に通ずる価値に解釈しなおすプロジェクト「あたらしきもの京都」から、「かざ」は誕生しました。
製造販売するのは、京都で長年にわたり扇子の製造・卸・販売を手掛ける大西常商店。そのきっかけは「扇子であおぐといい香りがするのはなぜ?」というお客さんからの何気ない質問だったのだそう。「扇子業界の当たり前」を逆手にとって作られたのが、「かざ」なのです。
さて、扇子の扇骨をフレグランスにするという構想はできましたが、肝心のデザインはどうしよう。そんなときにプロジェクトを通じて出会ったのがデザイナーの三宅一成さんでした。
大西常商店にてすでに出来上がっていた構想を、三宅さんは的確にビジュアライズ。多くの人が「美しい」と思える、機能以上の「何か」が備わったフレグランスが出来上がったのだといいます。
長年受け継いできた工芸技術を、あえて現代に通ずる価値に解釈すること。長年の伝統を守ってきた人にとって、それは大失敗にもなりかねません。ですが、その一歩を踏み出さなければ、その伝統は廃れていってしまいます。
一歩を踏み出して作られた「かざ」。きっとこの後も、一つ大きく踏み込んだ新しいプロダクトが作られていくことでしょう。
商品情報
商品名 かざ
販売元 株式会社大西常商店
商品販売ページ https://creativecanvas.jp/store/items/p00013666/