その昔、約1200年前の平安時代では、扇子に和歌をしたため、その扇子に香を焚きしめて恋相手に贈り、想いを伝えていたといいます。その文化は今現在でも残っていて、手紙に香水を少しつけて香らせたり、お香典のお札に香りをつけたりなど、心を込めて何かを送るときに「香り」はとても印象的なキーアイテムとして役立ってくれますね。
私自身も、「香り」にパワーをもらった経験はたくさんあります。朝、ちょっと仕事を頑張りたい日はお気に入りの香水をつけて出かけますし、家に帰ればこれまたお気に入りのルームフレグランスが待っていてくれる。でも、お出かけ中は? もちろん、香水をアトマイザーに移し替えて持ち歩くことはできますが、温度や空気に触れることで変化してしまう香水を、この暑さの中持ち歩くのは気が引けます。じゃあアロマや制汗剤のボトル…? それもちょっと違うなぁ。
そんなときに出会った、「うつし香」という、扇子の形をしたハンディフレグランス。かばんにぽいっと忍ばせておき、暑いとき、少し休みたいときに広げてふわっと仰ぐだけで香りが広がります。今回はそんな「うつし香」を見ていきましょう。
情景と季節に合わせた5つの色と香り
扇子に使われている骨組み、「扇骨」は、滋賀県高島産の竹を薄く加工したもの。この竹は、吸水性と保香性に優れていて、一度吸い込んだ香りを長く保つことができる特性があります。また、竹そのものにも自然で、柔らかな香りがついていて、扇子を仰いだ時にうっすら感じる良い香りのもとになっているんです。
「うつし香」は、そんな竹にさらに香りをしみこませて作ったもの。また、竹だけでなく、扇部分に使われる和紙にも香りをしみこませることで保香性がさらにアップ。1年ほど香りが継続するといいます。
「うつし香」は、5つの色と香りから自分に合わせて選べます。そのラインアップを見ていきましょう。
あわ雪 × 沈香
手にのせればすぐに溶けてなくなってしまうような、冬の訪れを思わせる「あわ雪」。雪の日に深呼吸をすると感じる、透き通った空気のような、清涼感のあるさわやかで落ち着いた香りです。
春めく× 桜香
ながくうす暗い冬を乗り越え、ぽかぽかとひだまりを感じる季節をイメージした「春めく」は、日本の人がだいすきな桜の香り。満開の桜がいっせいに香り立つような、華やかさがあります。
月かげ × 白檀香
どんな季節においても、夜は月が空にかがやいています。「月かげ」は、そんな私たちを見守る艶めいた月をイメージしたもの。少しスパイシーな白檀の香りは、これから始まる夜の落ち着きを与えてくれます。
夜あけ×檜香
夏の朝。少しだけ気温もおちつき、外の湿ったような夏の香りを思いきり吸い込みたくなるようなそんな空。涼やかで心穏やかにリラックスできる、檜の香りがぴったりです。
陽ざし×沈丁花香
いまの季節にもぴったりな、晩夏に降り注ぐ陽の光と、そっとほほを撫でる秋の風をイメージした「陽ざし」。わくわくと華やかな夏から、穏やかで実り豊かな秋へ、自然に揺れる沈丁花の香りをあしらいました。
「うつし香」に使われる和紙はとても丈夫。大西常商店で作られる和紙の扇子は、およそ3~5年ほど使われるお客様がほとんどなのだとか。また、和紙には「雲母」というキラキラとした粉を和紙に重ねており、光の加減によって上品で美しい輝きをはなちます。
香りが少し薄れてきたな、と思ったら、500円で香りの付けなおしをしてくれるサービスも。お気に入りの大切な扇子だからこそ、長く使える嬉しさがありますね。
京都の扇子職人たちを守っていくためのアップデート
一本の扇子ができるまでに、87もの工程があると言われています。竹を薄く加工したり、和紙を張り付けたり。そのひとつひとつが、熟練の職人の手作業によって行われています。
職人は60歳を超えてもまだまだ若手と言われるほどに長いものですが、需要の低下とこの先の雇用不安もあり、新規に職人を目指す人が減少。どんどん職人の数が減ってきていることも実状です。
日本で生まれた、伝統ある「扇子」の技術を守るために、「このままの扇子を作るだけではいけない」と奮起して開発されたのがこの「うつし香」でした。
「うつし香」を製造・販売する大西常商店は、100年の歴史を持つ扇子の老舗。職人たちの雇用を守りながら、扇づくりの技術を後世に残していきたいと、従来の扇文化を守りながらも新しいエッセンスを加えたプロダクトを開発しています。
「うつし香」のほかにも、扇子と香りを融合させたプロダクトがありますのでぜひそちらも見てみてくださいね。
https://www.nansuka.jp/authoryamaguchimao/p007107/
商品情報
商品名 うつし香
販売元 株式会社大西常商店
商品販売ページ https://irohani.official.ec/blog/2019/05/28/185321