日本の伝統技術とテクノロジーが融合した、畳の新しいカタチ。 -ヴォロノイ畳『TESSE』

山口 真央
山口 真央
2020.03.17

近年、生活や建築の洋風化と共に、徐々に減少傾向にある、畳。その歴史は古く、現在の畳に似た構造のものは平安時代から使われていたといいます。少し古いデータにはなりますが、1993年には4500万畳あった畳表の年間需要量は、2008年には1720畳と、約3分の1にまで減っているそう(熊本県い業生産販売振興協会調べ)。

今回ご紹介する「TESSE(テッセ)」は、そんな日本の伝統技術である畳製造と、テクノロジーの融合によってうまれた、畳の新しいカタチ。その魅力を詳しくチェックしていきましょう。

日本古来の伝統技術として、古くから愛されてきた畳。その畳に、今新しいカタチが求められている。

畳の魅力、再認識

夏は涼しく、冬はあたたかい。どこか懐かしい香りがして、そこに座っているだけで落ち着ける。畳には、そんな不思議な力があります。日本には、中国から伝わった文化が数多くあるのですが、畳は日本生まれの文化。伝統の技として今なお私達の生活に息づく畳ですが、平成になるとフローリング人気の上昇と合わせて、和室を作らない家造りも主流になってきました。

畳に使用する「い草」は、その空間の湿度を調節してくれる効果を持っています。ベタベタと不快な夏の湿気は吸い込み、乾燥する冬はい草が吸収していた水分を空気中に放出してくれます。また、空気をたっぷりと含んだい草は、フローリングと比較してクッション性が高く、下の階への物音を軽減させる防音効果もあるといいます。

こういったメリットから、畳に馴染みのある高齢者家庭や、デリケートな赤ちゃんがいる子育て世代をはじめ、これから家を建てるという人に向けても畳のよさを見直し、住居に取り入れる事例が見られ始めています。2010年代には「和ブーム」といわれる言葉も登場するなど、今もう一度、畳のありかたが考えられているのです。


たくさんのメリットがある畳ですが、いざ「じゃあうちもリフォームで畳を敷きたいな」と思っても、デメリットに当たる場合があります。畳は「畳(じょう)」という長方形のカタチが決まっているので、台形、L字型といった変形のお部屋には適さず、また○畳、と決まったサイズの部屋にしか敷き詰められないという弱点があります。せっかくフローリングを畳にリフォームしよう、と考えても畳を敷ける間取りではなく、諦めるしかない…といったことも。

そこで登場したのが、ヴォロノイ畳「TESSE」。TESSEは、決まったカタチを持ちません。モザイクタイルのような幾何学模様の畳を組み合わせ、敷き詰めていく新しいカタチの畳です。

6畳、8畳といった決まった畳数ではなく、タイルのように畳を組み合わせることで、様々な間取りに対応するヴォロノイ畳「TESSE」。い草が持つ天然素材ならではの色味を活かした世界に一つしかないカラーリングパターンも大きな特徴です。

現代技術が詰まった「TESSE」の可能性

TESSEの独特なパターンは、地球物理学や気象学で空間分布データの解析に用いられる”ヴォロノイ図”を基に生成されています。畳の形状や目の向きなど、好みに合わせた畳を個別生成してくれるのが特徴です。

TESSEは、L字や台形といった難しい間取りにもしっかり対応。

TESSEを使用することによって、現代風の間取りであっても畳を無理なく取り入れられ、モダンな洋風個室にもマッチする、新しい「和室」の可能性を見いだせます。「間取りが和室向きではないから…」「既に持っている家具とは合わなそう…」というような、今まで畳を敬遠してきたご家庭にも受け入れやすく、また他とはちょっと違う、個性のつまった和室を実現できるのです。

TESSEを作り上げるのは、コンピューテーショナルな手法を取り入れ、建築を軸にインテリアやインスタレーションなどの幅広いジャンルで国際的に活動するnoizと、明治35年創業で、現在は岐阜県に拠点を置く畳製品製造と、その販売を行う株式会社国枝。現代技術を得意とするnoizと、伝統を知り尽くした国枝、両者の力を合わせ、現代の生活に寄り添う畳を模索した結果が、TESSE。畳の新しいカタチを世界に発信していく、そんな役割も担っています。

畳の分割数や目の向きなどをカスタマイズ。畳によって色味が違って見えるのは、い草の目の向きによる反射の効果なんだそう。世界にたった一つしかない、オリジナルの畳を作成できます。

まとめ

先述したように、今現在、畳の需要量はどんどんと減少し、それに比例するように、日本の伝統文化である畳制作を担う人手や、畳に使われるい草農家も減少の一途をたどっています。畳のよさが見直されていることも事実ですが、従来の畳は間取りやデザインに制約があり、敬遠されてしまうこともありました。

TESSEは、そんな畳を、もっと現代の生活に馴染ませ、もっと広く浸透させるきっかけの一つになるのかもしれません。日本が誇る伝統技術と、現代技術の融合で畳をもっとよいカタチに。伝統を守るだけではなく、それをさらに発展させていくTESSEに、今後も注目していきたいですね。

project   ヴォロノイ畳 TESSE
collaborator 株式会社国枝
photo    高木康広

山口 真央
WRITER PROFILE

山口 真央

北関東出身・都内在住のライター/編集者。音楽と本と野球とお酒、深夜ラジオをこよなく愛する平成のゆとり世代です。

Twitter:@kmiycan

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