みなさんは子どもの頃に「悪い子は地獄に堕ちるよ」などと親に言われた経験はありませんか。大人になってからは、『生き地獄』や『借金地獄』のように、恐ろしく苦しい状態を表す単語として使っている方も多いと思います。
地獄と聞くと、漠然と鬼や閻魔様がいて拷問のような苦しい世界をイメージしますが、実は地獄に堕ちる条件は決まっており、ほとんどの人が地獄に堕ちる条件に当てはまっているんです。今回は、地獄に堕ちる条件や長い長い地獄までの道のりをルートマップでご紹介します。
地獄とは?
地獄とは、生前に悪行を犯した者が行く死後の世界のひとつです。仏教での地獄は、恵心院の源信が985年に撰述した『往生要集』がベースになっています。仏教には、6つの世界があり、死んだ人間は、6つの世界いずれかに生まれ変わるとされています。この6つの世界を「六道」と呼び、以下の種類があります。
・天道
・人間道
・修羅道
・畜生道
・餓鬼道
・地獄道
六道は、上から順に苦しみが少ない世界となっており、今私たちが生きているのが人間道です。つまり、地獄道はもっとも苦しみが多い世界。もし転生してしまったら文字通り“地獄”です。
地獄までのルートマップ
それでは、人間が死んだあとどういった道のりで地獄に行くのか、地獄までのガイドマップを使って紹介します。地獄までの道のりは長いので、心して向かわなければいけません。
地獄までの道のりは長く、地獄に行くまでに4つのポイントに寄っていただくことになります。
死んだらまず「死出の山」に向かいます。死出の山は、周囲は真っ暗で、とても険しい道のりです。峠を越えると、徐々に明るくなり、川のせせらぎが聞こえてきます。
やっとのことで山を下りると「賽の河原」に到着します。賽の河原は、親よりも先に死んだ子どもが行き着く場所です。子どもたちは、親よりも先に死んだことで「親を悲しませ、親孝行もできていない」という罪を償わなくてはいけません。
そんな子どもたちを横目に向かうのが「三途の川」。三途の川には、3通りの渡り方があり、生前の罪の重さによって渡り方が決まります。善人は橋を渡り、罪の軽い者は浅瀬を渡り、重罪人は激流の深瀬を渡らなければいけません。川のほとりには、奪衣婆(だつえば)懸衣翁(けんえおう)という老夫婦が待ち構えており、2人が罪の重さを量ります。
三途の川を渡ると、いよいよ十王による審判のときです。泣いても笑ってもここで極楽か地獄かが決まります。
罪を測る審査基準
十人もの王が、これまでの罪を洗いざらい審査します。審査基準は以下の5つ。仏教には、五戒と呼ばれる5つのルールがあり、これを守れば天国に行けるといわれています。
・不殺生(ふっせしょう):生き物を殺すこと
・不偸盗(ふちゅうとう):盗みをはたらくこと
・不邪淫(ふじゃいん):よこしまな男女関係をしないこと
・不飲酒(ふいんしゅ):お酒を飲まないこと
・不妄語(ふもうご):嘘をつかないこと
殺生の対象は、生きるものすべて。虫はもちろん、人が殺した豚や鶏のお肉を食べることもアウト!つまり、現代では普通に生きてるだけで罪を犯していることになります。
判決を下す10人の裁判官たち
私たちの罪の重さを量る、10人の審判たちを紹介します。初七日〜七七日(四十九日)までの七日毎、百か日、一周忌、三回忌の計10回、順次王の裁きを受けます。
誰しも一度は耳にしたことがある「閻魔大王」も、実はこのなかのひとりです。10人の王によって、審査されたら極楽か地獄か、どの地獄に行くかが決まります。
8つの地獄
一口に地獄といってもひとつではありません。地獄は8つのレベルにわかれており、生前の罪の軽重によって、地獄のレベルが変わります。
どれも身の毛がよだつほど、恐ろしいものばかりです。8つの地獄の他にも、多数の小地獄があり、それぞれの地獄を抜けても小地獄が待ち構えています。
死後の世界を考えるきっかけに
西明寺(岐阜県)や太宗寺閻魔堂(東京都)など、日本には全国各地に閻魔大王の像が鎮座しています。古くから日本人にとって地獄は身近な存在であり、ここでは紹介しきれなかった内容がたくさんあります。
今回は仏教での「地獄の世界」を紹介しましたが、「死後の世界」は世界中にも存在します。各国の文化や歴史よって、多種多様に描かれた死後の世界を覗いてみたり、自分だけの死後の世界を想像してみるのも楽しいかもしれません。