「泣ぐ子はいねがぁ〜」と叫びながら、恐ろしい形相のナマハゲが家々を巡る、秋田県のなまはげ柴灯まつり。テレビやニュースでよく見る、ナマハゲを見た子どもが泣きながら逃げ回る様子から、「怠け心を戒める行事」だと思っている人も多いのではないでしょうか? しかし、ナマハゲの力はそれだけではありません。ナマハゲは神の使いとされており、無病息災や五穀豊穣、豊漁をもたらすとされています。
日本では、その土地へ根付く文化によって、さまざまなお祭りが開催されておりますが、その内容や由来については意外と知られていないもの。全国のお祭りのなかでも、今回は思わず目を疑いたくなる、一風変わった日本のお祭りを紹介します。
まわし姿の男たちのガチンコ勝負「西大寺会陽(はだか祭)」岡山県
通称「はだか祭」と呼ばれる「西大寺会陽」は、日本きっての奇祭として知られています。国の重要無形民俗文化財にも指定されており、500年以上前から続く歴史あるお祭りです。
西大寺会陽では、毎年2月になると西大寺の本堂に約10,000人のまわし姿の裸の男たちが集結。小窓から2本の宝木が投げ込まれると一斉に激しい争奪戦を繰り広げ、宝木を勝ち取った者が福男とされます。
もともとは室町時代の住職が、参拝者に守護札を出したところ、大変御利益があるとして希望者が殺到。紙の御札だと奪い合いで破れてしまうので、木のお札に変えたのが始まりとされています。
大勢の人が裸で奪い合うのは、ぶつかっても怪我をしないためや身体の自由を得るためと言われています。当時一般的だった和装では、布が絡まったり、引っかかったりする危険があったのかもしれません。
火の中であばれまくれ!「あばれ祭」石川県
石川県能登で開かれるキリコ祭りのトップバッターとして開催されるのが、宇出津八坂神社の「あばれ祭」です。
あばれ祭とは、火の付いた大松明の周りを火の粉を浴びながら練り歩き、神輿を海や川、火の中に投げ込んだり、地面に叩きつけたりする、なんともデンジャラスなお祭りです。
あばれ祭の始まりは江戸時代。この地に疫病が流行したため、京都の祇園社から牛頭天王を招聘し盛大な祭礼をおこないました。そのとき、大きなハチが現れて疫病者を刺したところ、たちまち疫病者は回復。地元の人はこのハチを神の使いとして祀り、喜び乱舞したのが始まりとされています。
あばれ祭は、能登の数あるキリコ祭りのなかでも、極めて豪快な祭りとして知られており、全国から見物客が訪れます。
笑って、笑って、笑いまくれ!「笑い祭(丹生祭)」和歌山県
笑い祭(丹生祭)は、「鈴振りさん」と呼ばれる男が「世は楽じゃ、永楽じゃ、笑え、笑え〜」と笑いながら周囲を練り歩く、なんともユニークなお祭りです。
鈴振りさんは、白塗りの顔に頬に赤文字で「笑」と書いた派手な見た目で、神輿や屋台を誘導しながら町を歩きます。そして「枡持ち」と呼ばれる枡を持った男が「ワッハッハ、ワッハッハ」と笑いながら、鈴振りさんの後を続きます。
遠い昔、出雲大社で開かれる神様の会議に、うっかり寝坊してしまった丹生都姫を村人たちが笑って慰めたのが笑い祭りの由来です。今では、笑って邪気を祓い、五穀豊穣を祈願するお祭りとして知られています。丹生都姫のように、失敗してもみんなが笑っていると自分も自然と笑顔になれそうですね。
子どもが見たらトラウマ?!「パーントゥ」沖縄県
重要無形民俗文化財に指定されている沖縄県・宮古島の奇祭「パーントゥ」。蔓草を巻きつけて仮面を被った泥だらけの仮想神が、集落中の人々を誰かれ構わず追いかけ、泥を塗りたくります。
あまりにも恐ろしいその姿に、子どもや赤ちゃんは悲鳴をあげながら逃げ回るのです。なりふり構わず泥を塗りたくるパーントゥは、泣き叫ぶ子や新車にも容赦なし。泥の強烈なニオイは最低でも2,3日は残るとか……
パーントゥは、その昔、海岸にクバの葉に包まれた仮面が漂着、その仮面を被った若者が全身に泥を塗りたくって神様になったのが由来とされています。パントゥーンに泥を塗られることで無病息災になると言われており、見た目とは裏腹に縁起の良いお祭りなのです。
日常を飛び出して、開放的な体験を
今回紹介したお祭り以外にも、日本には奇想天外なお祭りがたくさんあります。どれもその地に住む人々が日常生活の中で生み出し継承してきた文化によって、形を変えて発展してきました。ユニークなお祭りのなかには、トラウマになりそうな恐ろしいお祭りもありましたが、人々の幸せや健康を願うものばかりです。
お祭りを通してその土地の文化を知ったり、地域の人と関われたりと、お祭りには普段なかなか味わえない魅力がたくさんあります。たまには日常を飛び出して、参加者も見物客もひとつになって熱狂できるイベントに行ってみるのもオススメです!