鶴や手裏剣など、「折り紙」は頭の中のイメージで、さまざま造形ができますよね。子供から大人まで熱中してしまう創造的な遊戯である「折り紙」。日本人なら誰しも一度は折り紙で遊んだことがあると思います。折り紙は平安時代に始まったと言われており、古くから日本の伝統的な文化として親しまれてきました。
このように昔から娯楽としての印象が強い「折り紙」。実は、そこから派生した学問領域があるのです。あまり知られていませんが、折り紙は「折り紙工学」として、とても身近なところから宇宙空間に至るまで幅広く応用されています。
そこで今回は、折り紙から派生した折り紙工学の活用例を紹介していきます。
宇宙空間で展開!壮大なスケール「ミウラ折り」
折り紙工学の代表的な活用例として、三浦公亮東大名誉教授が考案した「ミウラ折り」が有名です。ミウラ折りは、縦の折り線をジグザグにすることで、平行四辺形の折り図ができあがるのが特徴です。ジグザグにすることで、折り目がお互いに重なり合わず、開閉時にかかる紙の負担を減らせます。また、折り畳んだ一端をひっぱると面同士が連動して、一気に開くことができるのです。
この特徴が宇宙開発で注目され、1995年に打ち上げられた日本の観測衛生「宇宙実験・観測フライヤー」で太陽光パネルの開閉に採用。また、最近ではNASAのソーラーパネルの構造にも活用されています。
あの特徴的な模様は「折り紙工学」からきていた!
キリンの缶チューハイ「氷結」にも折り紙工学が活用されているのはご存知でしたか?「氷結」といえば、開けた時にパキパキという音とひし形のデザインが特徴の人気商品です。缶の表面の凹凸は、「ダイヤモンドパターン」と呼ばれており、ミウラ折りを参考に考案されたものなのです。缶を開けた時のパキパキという音の爽快感と強度の高さにより、ダイヤモンドパターンが採用されました。
また、キリンの缶コーヒー「FIRE」でも「ダイヤモンドパターン」が使われています。ダイヤモンドパターンを採用することで、強度を下げずに軽量化することが可能になったのです。
まさかこんな分野にも。優雅に着飾る折り紙工学
折り紙工学は、ファッション業界でも活用されています。世界的なファッションブランド『ISSEY MIYAKE』は、折り紙構造から着想を得た「折りたたみドレス」を発表。ファッションデザイナーである三宅一生氏と、研究者の野島武敏氏とのコラボレーションにより生まれました。
「折りたたみドレス」は、見た目のファッション性はもちろん、コンパクトに折り畳めることや複雑な縫製がいらないといった特徴があります。
これは、朝顔のつぼみが螺旋状に花へと開花する構造をもとに、野島氏が考案した「巻取りモデル」と「円錐折り畳みモデル」を応用し制作されました。このように、機能とスタイルを融合させたデザイン性も高く評価されています。
医療現場で活躍する極小「折り紙」
医療分野においても折り紙工学を活用している事例があります。それは「なまこ折り」を使った人工血管「ステンドグラフト」という医療器具です。ステンドグラフトは、主に動脈硬化により狭くなった血管を広げることに使用されています。円筒のチューブを折り紙構造によって小さく折りたたむことで、従来と比べてスムーズに血管へ挿入できるようになりました。
「伝統」を育む文化が土壌。社会を進化させる折り紙工学の可能性
飲料の缶や宇宙開発といった、さまざまな分野で折り紙工学が応用されています。しかし、まだまだ発展途上です。
真新しい技術だけでなく、昔から存在する伝統にも、イノベーションのヒントが隠されているのかもしれませんね。みなさんの身の回りにも、折り紙工学を応用できそうなものはありますか?
さまざまな人達が参加してプロダクト開発を行う「canvas」というサイトでは、「折り紙工学」の可能性に着目したプロダクトアイディアが募集されています。折り紙工学に興味をもった方は覗いてみてください。
今後も日本の「折り紙」から派生した「折り紙工学」が、世界のさまざまな分野で役立てられ、社会の発展に寄与していくことが楽しみですね。