みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回は台湾北部の大都市「台北」の旧市街で話題を呼んでいる、漢方の香りが漂う伝統的な「匂い袋」について、ご紹介したいと思います。
早速みていきましょう!
台北の旧市街「大稻埕(ダーダオチェン)」で、消費を促す取り組み
台北の旧市街「大稻埕」は台北市内の大同区付近に位置し、清の時代から日本統治時代にかけて、台湾の中でも経済・社会・文化の中心地と言えるほどの発展を遂げた地区です。数々のお店が並び商業活動が盛んなことから、毎年春節の前に買い物客で混雑することでも有名で、日本統治時代には各種雑貨とお茶屋さんを中心とした店舗が軒を連ね、その中でも漢方薬の薬行が多いことでも知られています。台湾元来の古い街並みを目にすることができるだけでなく、街中を歩いているだけで鼻からも漢方の香りを感じられるようなエリアになっています。
2021年の年末にここ大稻埕で自治体からの補助を受け、とある消費を促す施策が打ち出されました。旧市街の指定された店舗で一定金額以上消費をすると、なんと漢方薬の香りが溢れるオリジナルの香り袋をゲットできるという、ユニークなキャンペーンについて今回ご紹介していきます。
中国の伝統的な香りを詰めたグッズ、「香のう」
「香のう」とは中国の伝統的な匂い袋のことで、古くから漢方の薬材などの自然香料を詰め込んだ、持ち運び可能な香りグッズです。特に毎年旧暦5月5日の端午の節句に、女性は香り袋を身につけることで、邪気を払うだけでなく殺菌効果があるとして、古くから親しまれています。
今回「大稻埕神農香のう」のトータルデザインを手掛けた台湾のデザイン事務所―究方社は、コロナの時代を生き抜く中で、漢方の香りを身につけることで嗅覚から人々の感情にパワーを与えるだけでなく、同時に大稻埕の産業的な特色についても感じ取ってほしいと語っています。
プロダクトの名称に出てくる「神農(しんのう)」とは古代中国の伝説に登場する「三皇五帝」のうちの一人で、人々に医療と農耕の技術を教えたと言われています。医薬と農業を司る神様として「神農大帝」と尊称されており、ここ大稻埕でも人々に古くから拝められていました。
自然由来である東洋医学ならではの安心感を感じられますね。
それぞれ異なる匂いで配合された、3種類のデザイン
香のうの袋の部分の材質は通常、絹が使われることが多いですが、今回は中身が透けて見える特殊な紙で作られています。古代神話によると、神農の神様の腹部が透明になっていて臓器が全て外から見えることに因んで、この香り袋も内部が見えるようにデザインされたそうです。
香のうの中には香りが付着した小さな香り紙と漢方薬が入っており、バリエーションは「安神」「安身」「安心」と日本語ですべて発音が同じですが、中に入っている漢方の薬材の部位が、それぞれ果実や種子系か、根や茎系か、もしくは草花系かで、3種類に分類されています。どれも「神農の香り」をテーマに、異なる世界観を醸し出しています。
一つ目のテーマは「安神」。果実や種子系を中心に、香附子、砂仁、麦冬の合計3種類の漢方薬が配合されています。
二つ目のテーマは「安身」。根や茎系を中心とした、葛根、黃柏、一條根が配合されています。
三つ目のテーマは「安心」。草や花系を中心とした、菩提子、茉莉、山茶花が配合されています。
伝統工芸と消費促進を結びつけた見事な施策
3種類の匂い袋はランダムに指定された店舗に配布され、消費者は特別に選ぶことなくそのうちの一つをゲットする仕組みになっているので、どれが当たるのかわからないというサプライズ的な要素も、この企画には含まれています。
また匂い袋に使われている薬材は、大稻埕の漢方薬店から協力を得て使われているため、より多くの人に知ってもらえるきっかけにもなります。日が経つにつれて漢方の香りが薄くなったとしても、中身の香り紙に自ら香りを加えることで、さらに長く身につけることも可能です。
漢方の魅力を多くの人に認知してもらえるだけでなく経済も回せるという、地元に長く伝わる伝統的な産業と消費促進政策をうまく融合させた格好の事例だと感じました。
では、次回もお楽しみに!
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