2020台湾地方創生展in渋谷ヒカリエ

Seikyo
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2020.02.29

みなさん、こんにちは。半分台湾人のSeikyoです。
今回は、台湾の地方創生の取り組みについてご紹介します。

今年の1月に渋谷ヒカリエで「台湾地方創生展」という展示が開催されていたので、その潜入レポートをお届けしようと思います。

日本と同じく、少子高齢化問題を抱える台湾

日本でも都会に人口が過度に密集し地方の過疎化が問題視され、「東京の一極集中」というワードがあるように、実は現在台湾でも同じような課題に直面しています。多くの若者が北部の都市「台北」という大都会に集中していて、かつ少子高齢化の影響で地方の人口減少が進み、ますます都会と地方の差が広がるということが懸念されています。
そこで台湾の人々の関心を集めたのが、地方にUターンを促す「地方創生」という考え方です。

政府が主導して「地方創生」を推し進める

こうした課題を本格的に認識し始めた政府は、2019年を台湾の「地方創生元年」に制定するなど、全台湾戦略レベルで地方創生を推進する長期的な計画を始動させました。地方の自治体の主導だけでなく、官民一体となって、地域ならではの特色を生かしながら新たな雇用を創出し、若者が安心して地方に戻れるような取り組みが少しづつ始まってきています。そこで注目されているのが幅広い意味での「デザイン」で、斬新なアイデアによるアプローチが求められています。
ちなみに「地方創生」というワードですが、実は台湾でそのまま使われていて、いわば日本から輸入された言葉として、台湾の人々はこの四文字を中国語式に読んでいます。

展覧会で紹介されていた、地方創生の5つの政策

2020年、日本での展覧会を実現

この台湾地方創生展は、昨年に台北市内などで展示を経たあと今年日本上陸を実現させ、1月の18日から28日までの十日間、渋谷ヒカリエの8階の展示スペースにて開催されました。展示では「テクノロジー」、「産業」、「共創力」、「ブランド力」の4つのテーマに沿って、台湾各地での施策やその成果物が紹介されており、地域を活性化させる様々なアイデアを直接目にすることができました。その中で印象に残った事例を、いくつかご紹介したいと思います。

渋谷ヒカリエ8階の展示の様子

菱の実の殻を再利用した、斬新な素材

一つ目はこちらの「官田烏金」という事例です。台南市に位置する官田は、「菱角(リンジャオ)」という黒くてヒゲみたいな形をした食べ物で有名です。菱角を日本語にすると「菱(ひし)の実」になりますが、台湾の夜市や市場でも売られていて、黒い殻をむくと白い実が中に入っており、栗のようなホクホクとした食感を味わえます。

この剥かれたあとの黒い殻ですが、年間3,000トンにものぼる量が廃棄され、地域の環境問題になっていました。そこで地元の産官学が連携しチームを結成して、この本来捨てられる殻を再利用して研究開発された素材が「菱殻炭」です。この素材は空気と水の浄化ができ、土壌の質を改善することが期待されています。

また、この素材を使ったインテリアグッズや陶芸品も開発され、この地域に新たなビジネスチャンスを生んだそうです。エコで実用的だけでなく、インテリアにも溶け込みやすいシックなデザインがとても印象的でした。

|官田烏金(中国語サイト)

https://www.gtbg.com.tw/

被災地の「竹」を使った復興プロジェクト

二つ目は、南投県の竹山の事例です。この地は1999年の台湾中部大地震で被災し、竹山のシンボルだった竹産業の荒廃が進み、復興が目前の課題でした。そこで地元の若者や商店によって結成されたのがクリエイティブ集団「小鎮文創」で、再びこの地に活気を取り戻そうと、地域ブランドの立ち上げや定期的にイベントを開催するなど、竹山の活性化に努めました。

|小鎮文創(中国語サイト)

http://www.townway.com.tw/

そこで、地元の竹産業とコラボして誕生した「元泰竹藝社」は、この地に育った竹を使って、歯ブラシやストローなど日常の生活で使えるアイテムを開発。竹製のコップは竹の廃材を再利用して作られており、エコという視点からも評価されています。コップにデザインされたグラフィックがなかなか可愛らしいだけでなく、ピクニックやキャンプなどのアウトドアシーンにも大活躍しそうですね。

|元泰竹藝社(中国語サイト)

https://www.bamboobrush.com.tw/

台湾の地方に潜む魅力を一見

この2点以外にも事例が盛り沢山で、全てご紹介しきれませんでしたが、原住民族の伝統工芸をモチーフにした商品や、地元での黒糖づくりを機にサトウキビ栽培を復活させるなど、台湾のあちらこちらで生まれたクリエイティブなアイデアが満載の展覧会でした。
また、国を問わず地方創生を推し進めるには、産官学が一体となり知恵を絞ることで、初めて実現するものだと深く実感しました。まだまだ知らないことが多い台湾です。

ではでは、台湾でお待ちしております!(笑)
次回もお楽しみに。

|台湾地方創生展 公式Facebook

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WRITER PROFILE

Seikyo

1996年台湾生まれ。半分台湾人。東京でグラフィック&Webデザイナーとして働きながら、台湾と日本の文化のギャップをデザイン的な視点で発信中。

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