テクノロジーや価値観で、わたしたちの “からだ” はどう変わる?|わたしのからだは心になる?展 (SusHi Tech Square)

ぷらいまり
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2023.09.12

ゲームやVRの中でバーチャルな身体を操作したり、位置情報ベースのゲームやカーナビで機械の命令に従って移動したり…こうした体験は日常に溶け込むものとなりましたが、一歩立ち止まって考えると、自分の意思と身体が分離しているような感覚を覚えることも。

そうした新しい身体認識に焦点を当てた展覧会が、東京・有楽町のSusHi Tech Squareで開催されています。

【SusHi Tech Square】新たなアート&テクノロジーの拠点

有楽町駅前に新たにオープンした「SusHi Tech Square」は、メディアアートとテクノロジーの体感拠点となる東京都の施設。

「SusHi Tech Square」外観(写真撮影:ぷらいまり)
「SusHi Tech Square」外観(写真撮影:ぷらいまり)

1階の“Space”では、東京の多様な文化や魅力をデジタルの力で体感できる展示が定期的に開催されます。駅からのアクセスも良好で、入場は無料。気軽に立ち寄ることができます。

テクノロジーとアートの交差点:わたしのからだは心になる?展

そんなSusHi Tech Squareの第1期の展示として開催されているのが、「わたしのからだは心になる?」展です。

「わたしのからだは心になる?」展 エントランス(写真撮影:ぷらいまり)
「わたしのからだは心になる?」展 エントランス(写真撮影:ぷらいまり)

この展覧会では、テクノロジーの進展が私たちの身体感覚に与える影響を、アートとテクノロジーの視点から捉える8組のクリエイターの作品を通じて紹介。展示は、「機械と身体」「バーチャルな身体」「社会のなかの身体」「環境と身体」という4つのテーマで構成されています。その作品の一部をみてみましょう。

《ボディジェクト指向#03 <変身>》/ 小鷹研理

「機械と身体」ゾーンに展示されているのは、名古屋市立大学で「からだの錯覚」を利用した研究を行っている小鷹研究室as 注文の多いからだの錯覚の研究室による作品。床に横たわると、身体の一部がモニターに映し出され、さらにその映像が鏡に反射されることで、まるで自分の身体が他の「物体」に変化するかのような錯覚を体験できます。

《ボディジェクト指向#03 <変身>》/ 小鷹研理   作者の小鷹研理さんによるデモンストレーションの様子(写真撮影:ぷらいまり)
《ボディジェクト指向#03 <変身>》/ 小鷹研理 作者の小鷹研理さんによるデモンストレーションの様子(写真撮影:ぷらいまり)

実際に体験もできるので、筆者も試して見ました。

装置の中で動いてみると、モニターから自分の顔のパーツが見えなくなった瞬間に、自分の頭がボールのような物体に見えてきたり、モニターに映っていない身体の部位の感覚が無くなるように感じたり。自分の身体ながら、目から入ってくる情報の大きさに驚かされます。

《Puff me up!》/ ソンヨンア+鳴海拓志+新山龍馬+勢井彩華

機械やロボットといえば、硬く重いイメージがありますが、そのイメージとは異なる「柔らかいロボット」を目指したのがこちらの作品。「服に近い感覚でロボットを身につけたい」という発想から生まれたそうです。

《Puff me up!》/ ソンヨンア+鳴海拓志+新山龍馬+勢井彩華(写真撮影:ぷらいまり)
《Puff me up!》/ ソンヨンア+鳴海拓志+新山龍馬+勢井彩華(写真撮影:ぷらいまり)

服を着るように身につけると、空気で膨らんで動きます。とても軽く、動きも柔らかいので、自然と側にいられるパートナーのような気分です。ロボットの中のカメラを通じて遠隔の相手と視点を共有したり、会話もできたりと、遠く離れた人の「分身」のように過ごすこともできるのだとか。

自分の腕に着ける体験もできます。(写真撮影:ぷらいまり)
自分の腕に着ける体験もできます。(写真撮影:ぷらいまり)

WEB会議やテレビ電話など、鮮明な画像で遠く離れた人とコミュニケーションをとる機会も増えましたが、一方で、その解像度の高い距離感には時々疲れを感じてしまうこともありませんか?「柔らかいロボット」を通じた対話は、新しいコミュニケーションの距離感になるのかもしれません。

《Uber Existence》/ 花形槙

ロボットを「分身」として使うのではなく、実際の人間の身体を「分身」のように使うのがこちらの作品。代行運転サービスのUberやUber Eatsなどの代行サービスがありますが、こちらは「存在」を代行するという架空のサービスです。

《Uber Existence》/ 花形槙(写真撮影:ぷらいまり)
《Uber Existence》/ 花形槙(写真撮影:ぷらいまり)

アクターの帽子にはカメラ、マスクにはマイクがつけられ、遠隔からアクターの視点でものを見たり、アクターが話をしているかのように話したりと、遠隔にいる人の存在を代行しています。

だれかの存在の代行としてふるまう「アクター」の様子(写真撮影:ぷらいまり)
だれかの存在の代行としてふるまう「アクター」の様子(写真撮影:ぷらいまり)

自分の身体が別の人のものになってしまうなんて、まるでアニメの世界のようですが、どんな感覚なのでしょう?ちょっと怖い感じもしますが、ひょっとしたら、位置ゲームの指示に従って移動する感覚とそれほど変わらなかったり、別の人に変身するような面白さがあるのかも?なんて、普段は意識しない自分の身体の存在について考えてしまいます。

《美的身体のメタモルフォーゼ》/ 神楽岡久美

身体の「美しさ」の感覚も、時代や環境、テクノロジーによって変化するのでしょうか?

こちらでは、さまざまな文化・土地で「美しい」とされた身体についてのリサーチが展示されています。首輪で首を長くしたり、付け爪をしたり、歯を抜いたり…と、現代の日本にいるわたしたちが観て共感するものもあれば、全く違った価値観に感じるものも。土地や文化によって、美的価値観は全く異なってくるんですね。

さまざまな文化・土地での「美」をリサーチした資料。どの身体が「美しい」と感じますか? (写真撮影:ぷらいまり)
さまざまな文化・土地での「美」をリサーチした資料。どの身体が「美しい」と感じますか? (写真撮影:ぷらいまり)

では、今後はどんな美的価値観が生まれてくるのか?ということを考えたのがこちらの作品。将来、温暖化が進むと、温度の調節機能が非常に重要になり、そのために身体を引き延ばすことに美しさを感じるのではないかという点に着目し、そのための美しく見せるための架空の装置が表現されています。

《美的身体のメタモルフォーゼ》/ 神楽岡久美 photo by ぷらいまり
《美的身体のメタモルフォーゼ》/ 神楽岡久美(写真撮影:ぷらいまり)

テクノロジーだけでなく、社会の変化によっても身体のありかたが変わる可能性にはっとする作品です。

作品を観て考える「プレイグラウンド」のコーナーも

会場の中心には、たくさんの机が置かれた自由空間「プレイグランド」のコーナーも用意されており、休憩や意見交換のほか、仕事や勉強にも使える自由な空間となっています。また、週末にはファミリー向け、平日夜にはビジネスパーソン向けの「アートコミュニケーター」による鑑賞ツアーも開催されます。

展覧会を観て感じたことを他のひとと共有できるボードも用意されています。(写真撮影:ぷらいまり)
展覧会を観て感じたことを他のひとと共有できるボードも用意されています。(写真撮影:ぷらいまり)

平日の会社帰りや、休日のショッピングの合間にも気軽に立ち寄れるこの施設。日常の中で、自分の「身体」について新しい視点で考えてみる絶好の機会です。新しい体験と考え方を楽しんでみませんか?

「わたしのからだは心になる?」展は、2023年11月19日(日)まで開催されています。

展覧会情報

わたしのからだは心になる?展

公式サイト https://sushitech-real.metro.tokyo.lg.jp/first
会場    SusHi Tech Square 1F Space
会期    2023年8月30日(水)〜11月19日(日)
休業日   月曜日(ただし9月18日、10月9日は開場)、9月19日、10月10日
開場時間  平日 11:00~21:00(最終入場20:30)、土休日 10:00~19:00(最終入場18:30)
入場料金  無料
入場方法  個人は予約優先(当日枠あり)、団体は予約制 ※詳細はお問い合わせください。
予約サイト https://e-ve.event-form.jp/pages/1801/cM7YM7oAR8

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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