引き出しを開くたびに新しい「発見」と「驚き」——「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 (国立科学博物館)

ぷらいまり
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2022.09.06

上野にある「国立科学博物館」は、およそ490万点の膨大な標本を有しているのをご存じですか?その多くは収蔵庫に保管され普段は公開されていませんが、今、これらの標本の一部がユニークな方法で展示されています。

展示室にあるのは、たくさんの「引き出し」。この引き出しの中には何が隠れているのでしょうか?この記事では国立科学博物館で開催中の「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展をご紹介します。

「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 入り口(写真撮影:ぷらいまり)
「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 入り口(写真撮影:ぷらいまり)

国立科学博物館ってどんな場所?

1877(明治10)年に創立された、日本で最も歴史のある博物館の一つで、自然史・科学技術史に関する国立の唯一の総合科学博物館です。

国立科学博物館 外観(写真撮影:ぷらいまり)
国立科学博物館 外観(写真撮影:ぷらいまり)

日本の自然史・科学技術史に注目した「日本館」、地球・宇宙まで注目した「地球館」の2つの建物で常設展示が行われているほか、年数回の特別展も開催されています。

フタバスズキリュウの化石から、忠犬ハチ公の剥製、フーコーの振り子、ラムダ・ロケット用ランチャーまで。幅広い分野で科学に関わる展示がなされていて、常設展示だけでも1日では見切れないほどです。

重要文化財建築でもある「日本館」の天井ドーム (写真撮影:ぷらいまり)
重要文化財建築でもある「日本館」の天井ドーム (写真撮影:ぷらいまり)

「引き出し」を開いて「発見」する展覧会

今回の展覧会の会場は、「国立科学博物館」日本館1階の企画展示室。展示室には、大判の解説パネルはなく、複数の剥製と、木製の什器がすっきりと並べられています。

「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示室の様子(写真撮影:ぷらいまり)
「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示室の様子(写真撮影:ぷらいまり)

まず目に留まるのは、迫力のある剥製。説明文はほとんどありませんが、わたしたちの目線とおなじくらいの高さに展示された剥製たちからは、その動物の大きさや特徴を感じ取ることができますね。

「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示の様子(写真撮影:ぷらいまり)
「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示の様子(写真撮影:ぷらいまり)

例えば、ヤギやシカ、ウシなどの仲間の剥製が並ぶ様子からは、それぞれの角の違いをよく観察できます。動物園で動く動物を見るのとは違った見方ができるかもしれません。

続いて、什器のそばによると、そこには「象の歯」のように中にあるものを想像させる言葉から、「ぐるにょろつん」と聞き慣れない言葉まで、様々なタイトルがつけられた引き出しが用意されています。中にあるものを想像しながら開いてみると、引き出しの中には、「観察」のヒントになるものたちが。

「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示の様子(写真撮影:ぷらいまり)
「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示の様子(写真撮影:ぷらいまり)

説明のイラストや解説文のほか、模型、その特徴を説明する別の剥製など、さまざまなものが収納されています。タイトルを見て想像したものからギャップを感じる場合もあるかもしれません。例えば、「象の歯」というタイトルから想像したものと、引き出しを開いて観察してみる実際の「象の歯」など… 大きさや形など、想像からギャップがあるほど、印象に残りますね。

引き出しの中には様々なものが…(写真撮影:ぷらいまり)
引き出しの中には様々なものが…(写真撮影:ぷらいまり)

ふたたび剝製を観察してみると、さらに新たな気づきや疑問がでて来たりと、最初に見た時よりもさらに興味深く見られるかもしれませんね。

引き出し以外にも、様々な視点から生きものを知ることができる仕掛けがあります。(写真撮影:ぷらいまり)
引き出し以外にも、様々な視点から生きものを知ることができる仕掛けがあります。(写真撮影:ぷらいまり)

引き出しの中の模型や解説そのものも興味深い内容ですが、引き出しを開ける前にいったん自分の頭で考える時間を挟むことで、より印象に残るように感じられました。是非、会場で観察して、考えながら引き出しを開けて行ってみてくださいね。

大きな生きものから小さな生きものまで、さまざまな剥製を間近で観察できます。 (写真撮影:ぷらいまり)
(写真撮影:ぷらいまり)
大きな生きものから小さな生きものまで、さまざまな剥製を間近で観察できます。 (写真撮影:ぷらいまり)
大きな生きものから小さな生きものまで、さまざまな剥製を間近で観察できます。(写真撮影:ぷらいまり)

「ヨシモトコレクション」とは?

今回の展覧会の中心になっているのは”世界屈指の動物標本コレクション”として知られる「ヨシモトコレクション」。その数はなんと約400点にものぼるそうです!

このコレクションをつくったのは、ハワイのオアフ島で、1909年に日系二世として生まれた故ワトソンT.ヨシモト氏。働きながら独学で建築を学び、後に自らの会社を創立して大きな成功を収めたというヨシモト氏。もともとは、家族の食料を得るために狩猟をはじめ、後に、野生動物の姿を剥製として記録して残すこと、そしてそれらを陸生の野生動物が少ないハワイの人々に紹介することを目指していったといいます。

これらのコレクションは、ハワイの「ビショップミュージアム」、ヨシモト氏自身の博物館「Wildlife Museum」で展示された後、1997年から1998年には国立科学博物館へ寄贈されました。

「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示の様子(写真撮影:ぷらいまり)
「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」展 展示の様子(写真撮影:ぷらいまり)

頭部に浮き出した血管の様子などもリアルに再現され、またいくつかの標本では生きていたときの行動を再現して作製されています。今回の展示でもまるで生きている様な動きを感じさせるものもあり、こちらにも注目です。

「観察する眼」を持ったら… 常設展示やwebでさらに深く生きものについて知ろう

たくさんの「引き出し」を開いて「観察する眼」を持ったら、是非、地球館の3階の常設展「大地を駆ける生命」の展示室にも行ってみてくださいね。 こちらにも「ヨシモトコレクション」をはじめとした、多くの剥製が展示されています。常設展なので、いつ行ってもみられるのが嬉しいところ。

地球館 3階の常設展「大地を駆ける生命」展示室(写真撮影:ぷらいまり)
地球館 3階の常設展「大地を駆ける生命」展示室(写真撮影:ぷらいまり)

動物園でおなじみのライオンやパンダ、体重が1トンちかくになるアフリカスイギュウのほか、すでに絶滅してしまったニホンオオカミや、絶滅の危機にあるサーバルやコヨーテといった多くの生きものたちの姿が剥製のかたちで見られます。こちらでは、デジタル解説パネルでその動物たちの住んでいる地域を知ったり、動いている姿の動画を見られたりと、企画展の「引き出し」の解説とはまた違った「発見」ができるかもしれません。

これらの動物たちの解説や動画については、国立科学博物館のwebページでも見ることができるほか、「剥製3Dデジタル図鑑 “Yoshimoto 3D”」として、web上の3Dモデルでじっくり観察できます。1日で見切れなかった場合にも、おうちで観察してみるのはいかがでしょうか?

大人もこどもも楽しみながら動物について学ぶことができる 企画展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」は、2022年9月25日(日)までです。

展覧会情報

企画展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」
国立科学博物館収蔵庫コレクション | Vol.01 哺乳類

公式サイト https://www.kahaku.go.jp/event/2022/08whoarewe/

開催期間  2022年8月5日(金)~9月25日(日)
開催場所  国立科学博物館(東京・上野公園)日本館1階 企画展示室
開催時間  9:00~17:00 ※入館は閉館時刻の30分前まで
2022年8月5日(金)~14日(日)の開館時間は9:00~18:00です。
休館日   9月5日(月)、12日(月)、20日(火)
入館料   一般・大学生630円(団体510円)(税込)高校生以下および65歳以上無料
※常設展示入館料のみでご覧いただけます。

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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