山手線の渋谷-原宿間の高架下に描かれたカラフルなイラスト。これってアート?それとも落書き?なんて、目を留めたことのあるかたもいらっしゃるのでは。
実はこれ、いざという時にみんなを助けてくれるかもしれない工夫なんです。この記事では、”命を救うアート”プロジェクト「シブヤ・アロープロジェクト」をご紹介します。
「シブヤ・アロープロジェクト」って何?
イラストの中に描かれているのは、たくさんの矢印。この矢印、「一時退避場所」の方向を示しているんです。
災害が発生した時、避難場所として小学校や公園のような「一時集合場所」が思いうかびますが、昼も夜も多くの人が訪れる渋谷では、街を訪れた人たち全員が利用するには十分なスペースではないそう。
そこで、特に渋谷駅周辺で、一時的に退避する安全な場所として「一時退避場所」を定めているのだそうです。帰宅困難者支援 (受入) 施設が開設されるまでの間、この「一時退避場所」に留まれるんですね。現在、渋谷区では、青山学院大学・代々木公園の2箇所が「一時退避場所」として設定されています。
「シブヤ・アロープロジェクト」は、こうした「一時避難場所」を指す矢印やサインをアート化して街を訪れた人たちに伝える、渋谷区の主導するプロジェクト。イラストで示すことで印象に残りやすく、また、土地勘のない人や、外国人の方にも伝わりやすいんですね。
「シブヤ・アロープロジェクト」の作品を見に行ってみました
現在、渋谷区内の4箇所にアーティストたちの手がけた「矢印」があります。この4箇所を巡ってみましょう。
JR東日本高架下アロー(アーティスト ミック・イタヤ / しりあがり寿 / 伊藤桂司 / 小町渉 / 河村康輔 / 植田工)
高架下の壁一面に壁画が描かれています。多くのアーティストが参加しているので賑やかですね。
渋谷宇田川架道橋下(アーティスト 森本千絵)
こちらは、1アーティストが全面を手がけているので統一感がありますね。カラフルで楽しい「矢印」です。
渋谷キャスト前(アーティスト 東恩納裕一)
“多数の矢印が茂る樹木”というイメージからつくられた立体の作品です。360度、どの角度から見ても「矢印」の方向が分かるようになっています。
清掃事務所壁面(アーティスト ヒロ杉山(エンライトメント)
このプロジェクトで最初につくられたという作品。”渋谷の街の中に現れて違和感のあるもの”を目指してつくられたという全長12メートルの「矢印」は、ビルの4階と高い場所にあっても目立ちますね。
アーティスト支援やシャッターへの落書き防止の試みも、さらに広がるアロープロジェクト
いざという時に助けてくれるかもしれない「アロープロジェクト」ですが、それだけではない様々な試みも行われています。
例えば、2020年には新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、アーティストたちの活動が大きく制約されてしまいました。こうしたアーティストを応援する企画として、アロープロジェクトの趣旨に沿った「『矢印』をモチーフとしたグラフィック作品」を募集。選考を通過した作品にはデザイン料が支払われ、壁画等の製作などに活用されるそう。
また、落書きにお困りのビルやお店の壁・シャッターに、アロー・プロジェクトのグラフィック作品を描くことで、この問題を改善していこうという試みも。ひとつの取り組みから、様々なトライアルが派生しています。
普段、街をあるいている時には忘れがちな災害の事。でも、この矢印の意味を知ることで、ふと作品を目にしたときに「もし今災害が起こったら…」と、意識するようになりますね。
渋谷を訪れるときには、「シブヤ・アロープロジェクト」を見て、改めて防災について考えてみませんか?
プロジェクト情報
プロジェクト名 シブヤ・アロープロジェクト
公式サイト https://shibuya-arrow.jp/