文明開化の明治時代を経て、それまでの日本には見られなかった新しい大衆文化が大きく花開いた「大正」の時代。この文化は「大正ロマン」と呼ばれたりもします。
そんな「大正ロマン」の世界を、昭和初期に建造された文化財のなかで体験できる企画展が開催されています。この記事では、大衆文化が花開く華やかな大正時代を体感できる 「大正ロマン×百段階段」 をご紹介します。
華やかな衣装に調度品… モダンな大正時代の生活を体感
会場の「百段階段」は、目黒の「ホテル雅叙園東京」内にある東京都指定有形文化財。1935 (昭和10) 年に建てられた木造建築で、鏑木清方をはじめとする当時屈指の著名な画家達によって創り上げた天井や欄間に彩られた7つの部屋が99段の長い階段廊下で結ばれています。
大正時代への旅のはじまりは、「大正ロマンルーム」から。大正初期から昭和初期にかけて現れた近代的なライフスタイルを送る女性たちは「モダンガール(モガ)」と呼ばれました。そんなモガたちの暮らしが、「お部屋でのひととき」「旅行へおでかけ」というシーンをイメージして再現されています。
天井画や螺鈿細工など、「和」の装飾が美しい「十畝の間」に、華やかな絨毯やテーブル、ソファなどが配置され、和洋折衷の室内装飾と調度品がきらびやかに共演しています。
今回の展示は撮影もOKなので、こうした華やかな大正ロマンの世界に入り込んだ記念写真も撮影できるのも嬉しいところです。
窓から見える新緑の風景も美しい「草丘の間」は、「大正浪漫喫茶室」に。花鳥画や緻密な細工の建具が美しい空間で、色鮮やかなステンドグラスの作品たちに囲まれ、バウムクーヘンとアイス珈琲を楽しむことが出来ます。(1名様¥1,000)
華やかな絵画で体験する大正時代
お部屋や調度品だけでなく、今回の展示では様々な絵画を通じて大正の雰囲気を感じることもできます。
「大正ロマン」を代表する画家の一人といえば、竹久夢二。今回の展覧会では、直筆原画を含む約50点の作品が展示されています。当時の西洋の最先端のスタイルと、日本古来の抒情性を掛け合わせた夢二の作品は、描かれてから100年近くたった今でも色あせない魅力を放っています。
美人画で有名な竹久夢二ですが、今回の展示では、「美人画」に加え、「童画」「港屋絵草紙店」「セノオ楽譜」と4つのテーマで作品を展示。新しい魅力と出会えるかもしれません。
色木彫と日本画に囲まれた絢爛豪華な「漁樵の間」では、イラストレーター・マツオヒロミ氏のコミック&イラスト集「百貨店ワルツ」とコラボレーションし、当時をイメージしたイラストや雑貨が展示されています。
明治から大正にかけて多く開展し、商品を販売するだけでなく文化や流行を創出する場でもあった百貨店。イラストからは、華やかで幻想的で、商品を見ているだけでもわくわくするような当時の百貨店の様子が伝わってきます。
レトロだけれど新しい? 現代によみがえる工芸品たち
今回の展示では、明治〜昭和初期の頃から続く老舗メーカーが、現代にあわせてアレンジした工芸品たちと出会うこともできます。
例えば、1899(明治32)年に創業した廣田硝子は、大正時代に一席を風靡したガラスの生産方法「乳白硝子」を現代に復刻。一時期は廃れかけていた日本の伝統的なガラス生産方法を蘇らせています。
創業から200年を迎えるガラス製品の先駆「石塚硝子株式会社」の食器ブランド「アデリア」は、かつての昭和の家庭で使われていたアデリアのグラスウェアを、細部まで当時の雰囲気にこだわって復刻。単なる復刻ではなく、「現代の生活でも使いやすいこと」を考えてアレンジし、今回は大正ロマン番外編として「昭和レトロ」の世界を演出しています。
建物の細部の装飾にまでこだわった東京都指定有形文化財の「百段階段」の中で、華やかな「大正ロマン」の世界にタイムスリップしてみませんか?
「大正ロマン×百段階段」は、2022年6月12日まで、ホテル雅叙園東京で開催されています。
展覧会情報
大正ロマン×百段階段
公式サイト https://www.hotelgajoen-tokyo.com/100event/roman
期間 2022年 4月 16日(土)~ 6月 12日(日)
※ 5月 25日(水)は休館日
時間 11:30〜18:00 (最終入館 17:30)
会場 ホテル雅叙園東京 東京都指定有形文化財「百段階段」
料金 一般¥ 1,200 / 学生 ¥ 600 ※要学生証提示、未就学児無料
販売 ホテル雅叙園東京[ 一般入場券 ]
公式オンラインチケット [ 一般入場券、グッズ付入場券 、日時指定入場券 ]
https://www.e-tix.jp/100event/TaishoRoman.html
※状況により、開催内容が一部変更となる場合がございます。