「ロボット」と聞いたら、どんなものを思い浮かべますか? 例えば「ドラえもん」など、アニメに登場する相棒のようなロボットを想像することもあれば、今や身近となってきた「Pepper」や「ルンバ」のようなロボットを思い浮かべるかもしれませんね。ロボットたちがより身近になっていくと、人間の「からだ」や「こころ」には何か変化が起こるのでしょうか?
この記事では、様々なロボットたちを通じて「人間とはなにか?」を考える特別展 「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」 (日本科学未来館) をご紹介します。
そもそも「ロボット」ってなんだ?
会場に入ると、ASIMO(アシモ)など、2000年前後を中心に開発された人や動物型のロボットたちが1体ずつ展示ケースに並び、壁面はロボットにまつわる歴史が年表で展示されています。
「ロボット」という言葉がはじめて登場するのは、チェコの作家 カレル・チャペックが1920年に発表した戯曲「R.U.R」と言われており、人造人間やヒューマノイドのようなものを表す言葉として登場するのだとか。言葉が生まれてまだ100年くらいだなんて、ちょっと驚きですね。
でも、「ロボット」という名前ではなくても、紀元前に書かれた物語の中に人のように動く人形が登場したり、飛鳥時代の「日本書紀」にからくりの記述があったりと、ロボットにつながる概念は古くからある様子をうかがうことができます。
年表を見ていくと、最近では、AlphaGoによるプロ囲碁棋士への勝利や、ボストン・ダイナミクス社の人型ロボット「Atlas」、国際スポーツイベントでのドローンのパフォーマンスまで。さまざまな分野の話題が並びます。
「ロボット」の定義は、経済産業省では 「①センサー ②知能・制御系 ③駆動系 の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」 としています。「ロボット」とひとことで言っても、そこには、構造、機械、人工知能など、様々な分野の技術が絡み合っていて、さらに、SFの小説や漫画のような想像力も大きく影響を与えているんですね。
どこまでがロボットで、どこからが人? 人間のからだや感覚を拡張するロボットたち
ところで、ロボットと言ってもアニメに登場する相棒ロボットのように人格を持って動くロボットもいれば、戦闘ロボットのように人間のからだの延長のように動くロボットもいますよね。
次のゾーンでは、身体に装着して身体を拡張したり、操縦してもうひとつの身体のように扱うことができたりするロボットたちが紹介されています。
「MetaLimbs(メタリム)」は、ロボットの腕を装着して操作することで、第三、第四の腕が生えたように扱えるシステム。装着した人の足の動きによって操作するようです。
「腕が増える」なんて特殊な状況でも意外に人が適応できるのは、人間の脳がとても柔軟で、普通ではあり得ない状況でも学習によって慣れることができるためなのだとか。こんな状況でも適応できてしまう人間の脳と身体って、面白いですね。
動物のしっぽを模倣した「Arque(アーク)」は、装着することで、本物のしっぽのように身体のバランスを維持し、転倒や損傷から身を守るデバイス。バランスをとるだけではなく、触覚/力覚フィードバックをあたえることで、ヴァーチャル空間で空を飛ぶ感覚などを与えることができるなど、新しい「感覚」も感じ取ることができそうです。
腕を広げると4.5Mにもなるという、巨大な人型ロボット「零式人機」は、高所重作業用のロボット。オペレーターは、ロボットのカメラの視界をVRゴーグルで見ながらロボットを操縦。高所の作業も安全な場所から作業ができるそう。巨大で力強いロボットを、まるで自分の分身のように操れるのですね。
ロボットと人の関係の歴史を見ると、もともとは産業用ロボットたちが人とは離れた場所で作業をしていたところから、徐々に距離が近づき、エンタメや家電として人と簡単なやりとりをするロボットたちが登場。それが今の時代ですね。そこから、人とロボットが一緒に作業をしてお互いの手助けをしたり、最終的には、ロボットが人の一部となってからだや感覚を拡張していく… そんな風に、人間とロボットとの距離が近づき、関わり方も徐々に変化していく様子が感じられます。
生身の人間では考えられないくらいにからだの機能や感覚が拡張されていったら、わたしたちの考え方や価値観も変化していくかもしれないという可能性も感じさせます。
ロボットと人間の関係はどう変わる?
人の能力を「強く」するロボットたちがいる一方、なんと「弱い」ことにメリットがある場合もあるようです。
続くゾーンでは、人の「こころ」に寄り添う多様なロボットたちが紹介され、多くのロボットたちと実際にふれあうこともできます。
「LOVOT(らぼっと)」は、人の心に寄り添い、愛されるために開発された家族型ロボット。可愛いだけでなく、50を超えるセンサーで刺激をとらえて機械学習することで動きを生み出したり、学習を繰り返すことでひとりずつ違う性格に成長していったり。本当に生き物のようです。
ロボット単独では何もできないけれど、周りの人に助けを求めることで「何か」をなしとげる 「iBones(アイ・ボーンズ)」や、人間の言葉を話さずにあいまいな言葉を発することで人とのコミュニケーションを可能にする、「非自然言語ロボット」など、大学で様々なコミュニケーションを研究されているロボットたちも。あえて、「弱さ」や「あいまいさ」を取り入れることで、ロボット自体が「完全」でなくても、足りない部分を人間が補って成立するという発想もあるのですね。
「ロボットのよう」という言葉は、冷徹であったり、感情がなかったりという「心を持たない」意味合いで使われたりしますよね。でも、そんなロボットたちから意思や感情のようなものを感じたり、人が愛着を感じたり。「ロボット」のイメージもこれからは変わっていくのかもしれませんね。
「人間」と「ロボット」は異質なものですが、その境界は、徐々にグラデーションのように曖昧になっていくような未来も感じさせます。ロボットたちといっしょに、私たちはどのような未来をつくっていくことができるのか、思いを馳せてみませんか?
特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」は、日本科学未来館で、2022年8月31日まで開催されています。
※参考
「自在化身体論 ―超感覚・超身体・変身・分身・合体が織りなす人類の未来」 / 稲見 昌彦, 北崎 充晃, 宮脇 陽一, ゴウリシャンカー・ガネッシュ, 岩田 浩康, 杉本 麻樹 (エヌ・ティー・エス)
「優しいロボット」 / 松井 龍哉 (大和書房)
展覧会情報
特別展「きみとロボット ニンゲンッテ、ナンダ?」
特設サイト https://kimirobo.exhibit.jp/
会期 2022年3月18日(金)~8月31日(水)
会場 日本科学未来館(東京・お台場) 1階 企画展示ゾーン
時間 10:00~17:00 (入場は閉館の30分前まで)
休館日 火曜日 (ただし、3/22~4/5, 5/3, 7/26~8/30は開館)
料金
大人(19歳以上)2,100円(1,900円)
中人(小学生~18歳)1,400円(1,200円)
小人(3歳~小学生未満)900円(700円)
※( )内は8名以上の団体料金
※常設展もご覧いただけます
※ドームシアターは別料金(要予約)
※2歳以下は無料
※障害者手帳をお持ちの方および付き添いの方1名まで無料
※会場の混雑状況により入場整理券の配布、または入場を規制する場合があります
※会期等は変更になる場合があります
※本展覧会の内容は予告なく変更になる場合があります
※最新情報は本展公式サイトをご確認ください