みなさん、「能」って観たことありますか?日本の古典芸能で、能楽堂のような特別な場所で行われて、ちょっと難しそうなイメージも。
そんな「能」が夜の美術館を舞台に展開されて、オンラインで公開されているなんて、覗いてみたくなりませんか?
この記事では、世田谷美術館で開催され、オンラインで配信されているパフォーマンスの映像作品「夢の解剖ーー猩々乱(しょうじょうみだれ)」をご紹介します。
美術館の建築空間と対話するパフォーマンス
会場は夜の世田谷美術館。世田谷美術館は、2020年には「作品のない展示室」として、コロナ禍で展覧会が開催できないなか、建築家・内井昭蔵氏の手がけた建物そのものを展示してしまう試みも行った、建築も魅力的な美術館。
そんな世田谷美術館は1986年の開館直後から、美術館の中で音楽、演劇、ダンスなどの公演を行い、2000年代以降は「建築空間との対話」をテーマにしたパフォーマンスも開催してきています。
夜の美術館を舞台にしたパフォーマンスなんて、なんだかわくわくしませんか?その舞台をちょっと覗いてみましょう。
「映像作品」として楽しむ「能」の世界
今回の演目「猩々乱 (しょうじょうみだれ)」は、「猩々(しょうじょう)」という架空の動物が、友との出逢いに喜び、酒を飲み、舞う、というストーリー。祝賀、慶賀の雰囲気を現すことが主眼となっている作品ということで、作品に詳しくなくても、パフォーマンスそのものを楽しめそうです。
パフォーマンスのはじまりは、世田谷美術館の建築の様子が伝わる、明るいライティングから。エントランスホールの大理石の階段で笛や鼓が演奏され、その音と歌が吹き抜けの空間に響きます。
場面が変わると、ホールの照明が落とされ、月あかりのような照明の中、能面をつけた赤い髪の猩々が舞い、その灯り照らし出されることで、衣装も面も様々な表情を見せます。
演者ひとりにクローズアップすることなく、でも時々視点をかえながら、その空間とパフォーマンスの相互作用を楽しめる、約45分間のパフォーマンスです。
お部屋で観るときには、ぜひ、電気を消して、大きな画面でご覧ください。暗闇の中に月明かりのような柔らかい照明に照らし出されるパフォーマンスを、まるで会場と地続きのように体感できますよ。
コロナ禍を通じて考えられた「パフォーマンス」と「映像」の関係
今回の舞台は、日本文化に造詣の深いイタリア人振付家・演出家ルカ・ ヴェジェッティ氏が、日本国内の第一級の能楽師たちと組んで展開されるという異色の国際コラボレーション。
また映像は、世界的な注目を集める映画監督の杉田協士氏がプロデュースしています。
もともとは2020年10月に開催予定だった「パフォーマンス」でしたが、Covid-19影響で1年の延期に。その間、美術館と演出家の間で議論を重ね、「パフォーマンス」と「映像」、それぞれ独自の「作品」として世に送り出すことになったそうです。
こうした取り組みに至ったきっかけには、コロナ禍でやむなく作品を展示しない「作品のない展示室」という展覧会を行い、その展覧会の中でこれまでのパフォーマンスのアーカイヴ展示「建築と自然とパフォーマンス」を行ったこと、また、その展示に関連して、観客を入れずに実施したパフォーマンス「明日の美術館をひらくために」をYoutubeで公開した経験があるといいます。
コロナ禍があろうがなかろうが、生の作品に触れられなかった、作品が立ち上がる現場に居合わせることのできなかった圧倒的多数の人々に対して、何を、どのように、映像で伝えることができるのか。パフォーマンスと映像の関係について、あらためて考える大きなきっかけとなったのだそうです。
これまでにも美術館内でのパフォーマンスを行ない、アーカイブとして映像を残してきた世田谷美術館ですが、映像作品として有料で広く発信するのは初めての試みとのこと。
国と時間を超えたコラボレーションを体験できるパフォーマンス、おうちから体験してみませんか?
映像作品「夢の解剖――猩々乱」は、2022 年 3 月 31 日まで、オンラインで楽しむことができます。
作品情報
映像作品「夢の解剖――猩々乱」
公開期間 2021 年 12 月 1 日から 2022 年 3 月 31 日まで
料金 1,000 円 (視聴サイトにて決済)
視聴時間 約 45 分
申込 世田谷美術館ウェブサイトより
https://www.setagayaartmuseum.or.jp/event/detail.php?id=ev00987
https://vimeo.com/ondemand/yumenokaibou