シドニー・オペラハウス、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館、国立代々木競技場 第一体育館など、一度は本物を見てみたい世界の名建築たち。でも、その場に足を運ぶのは難しいご時世ですね。そんな中、なんとたった1枚の「紙」で世界の建築を再現した「折り紙建築」を紹介する展覧会が開催されています。
この記事では、現在開催中の「オリガミ・アーキテクチャー 一枚の紙から世界の近現代建築を折る」展 (Gallery A4) から、その魅惑の「折り紙建築」の世界をご紹介します。
1枚の紙から?驚異の「カミわざ」で再現された建築たち
壁面から台座の上まで、会場には約80 点にものぼる「折り紙建築」たちが展示されています。
例えば日本の建築では、中銀カプセルタワービルや新国立競技場など、個性的で目を引く著名な近現代建築が紙で再現されています。
驚くべき事にこれらの作品のほとんどは、1枚の紙に切り込みを入れ、それを折ることによって建築を再現しています。仕掛け絵本のように、二つ折りにしたカードを開くことで建築が立体的に立ち上がってくるんですね。
これらの作品のなかでもひときわ眼を引くのは、A2版を二つ折りにしたサイズで制作された「国立代々木競技場 第一体育館」。その立体的な曲線で出来た構造を、細かい直線の組み合わせで再現しています。完成形にたどり着くまでの試作品も併せて展示され、どのようにこの複雑な形状を再現したのかという過程も知ることができます。
この「折り紙建築」は、故・茶谷正洋氏(ちゃたにまさひろ、1934-2008、東京工業大学名誉教授)が 1981年に始めた新しい建築の表現。その繊細な「カミわざ」に、思わず息を潜めて見入ってしまいます。
世界の近現代建築に触れる
今回の展示ではこうした繊細な造形の美しさを楽しむだけでなく、世界中の名建築の歴史をたどる楽しみも。会場には、世界の地域ごとの近現代建築の年表が設置され、各地域のモダンムーブメントの流れを一望することができます。
また、展示されているすべての折り紙建築には、折り紙建築の技法とともに、建築そのものについての解説やエピソードも記され、建築の魅力や意義を知ることもできます。
世界の建築に目を向けると、例えば、シドニー・オペラハウス、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館など、こちらもまた有名な建築たちが折り紙で再現されています。シンプルな色でつくられているので、建築の特色がより明快に伝わり、その美しさをじっくりと楽しむことができますね。
自分で組み立てる楽しみも
それにしてもこれらの折り紙建築、あまりにも精巧で「本当に1枚の紙でできているの?」なんて思ってしまいます。
今回の展示では、折り紙建築家(制作者)の方々が実際にこれらの作品を制作する過程を映像で紹介するコーナーも。気が遠くなるような繊細な作業を重ね、ひとつの「折り紙建築」が組み立てられていく様子を見ることができます。
また、実際に自分の手で組み立てを体験できるコーナーも。カットが施された紙を自分の手で折って立体にすることで、1枚の紙で立体を表現する仕組みがよく分かります。
こちらの「折り紙建築」は、「折り紙建築型紙集 オリガミック・アーキテクチャー パターン・ブック」(茶谷 正洋 著, 彰国社) や「折り紙建築 世界遺産をつくろう!」(茶谷 正洋・中沢 圭子 著, 彰国社) といった複数の書籍で型紙も紹介されており、紙を切るところから自分で体験することもできます。
遠出が難しく、その場に行かないと見られない「建築」にも触れづらい今、「折り紙建築」で世界を巡ってみるのはいかがでしょうか?
「オリガミ・アーキテクチャー 一枚の紙から世界の近現代建築を折る」展は2021年6月3 日(木)までです。
展覧会情報
オリガミ・アーキテクチャー 一枚の紙から世界の近現代建築を折る
会場 GALLERY A4(ギャラリー エー クワッド)
住所 〒136-0075 東京都江東区新砂1-1-1
公式サイト http://www.a-quad.jp/
会期 2021年4月9日(金)~2021年6月3日(木)
時間 10:00-18:00(土曜、最終日は17:00まで)
休館日 日曜・祝日、4月29日(木)~5月5日(水)
入場料 無料
最新の情報は、公式サイト(http://www.a-quad.jp/)にてご確認をお願いいたします。