初心者でもアートって気軽に買えるの? 現代アートのある生活をもっと身近にする biscuit gallery、渋谷にオープン。

ぷらいまり
ぷらいまり
2021.03.28

「もしも自分のこの部屋に、アート作品が1枚あったら素敵だな。」なんて、思ったことありませんか?

でも、アート作品ってなんだか高そう。それにアートギャラリーってちょっと入りづらいし、周りに買い方を教えてくれる人もいない…

そんな想いに寄り添ってくれるようなギャラリー「biscuit gallery(ビスケットギャラリー)」が渋谷にオープンしました。このギャラリーをつくったのは、昨年までアートとは無関係の業種で会社員として働きつつ、同じような悩みを経て現代アートをコレクションしてきたコバヤシマヒロさん。

この記事では、新しいギャラリー「biscuit gallery」と、オーナー・コバヤシマヒロさんの想いをご紹介します。

若手作家を中心に扱う 明るく入りやすいアートギャラリー

このbiscuit galleryがあるのは、渋谷の東急百貨店本店から松濤の方面に向かう渋谷・松涛文化村ストリート。渋谷の賑わいから一歩離れ、落ち着いた雰囲気の通りに面した、自然光の入る明るい雰囲気の建物です。

biscuit gallery 外観
biscuit gallery 外観(写真撮影:ぷらいまり)

ギャラリースペースは3フロアにわたっています。取材に伺った際に開催されていた「biscuit gallery Opening Exhibition I」では、五十嵐大地さん、岡田佑里奈さん、清川漠さん、トモトシさん、中澤ふくみさん、森井沙季さん の6名の若手作家が紹介されています。続く「biscuit gallery Opening Exhibition Ⅱ」 (会期:2021年4月1日(木)~4月18日(日)) でも、京都の若手作家を中心に紹介するなど、今後も若手作家の紹介に力をいれていくといいます。

モノクロームの作品同士を対峙させた3Fの展示風景(左:岡田佑里奈 作品、右:清川漠 作品)  photo by ぷらいまり
モノクロームの作品同士を対峙させた3Fの展示風景(左:岡田佑里奈 作品、右:清川漠 作品)(写真撮影:ぷらいまり)

3フロアの各フロアに2名ずつ、テーマや手法で繋がりの見える作品が、作家同士の話し合いも経て展示されているそうです。3フロアあるので作品数も多く見応えがありますが、1フロアごとは落ち着く広さなので、「もしも自分の部屋に作品を置いたら…?」と意識しやすいかもしれません。

ギャラリーとしては珍しく、作品のタイトルと一緒に価格も表示されているので、洋服や雑貨を選ぶのと同じような感覚でも見られます。なかには1万円程度で購入出来る作品も。あれ、アートって意外に気負わなくても買えるのかも…?

オーナー・コバヤシマヒロさんに伺う “アートの専門家” ではなかったからこそできること

昨年まで会社員として働きながら独自のメディアで情報発信をされ、コレクターとしても有名なオーナーのコバヤシマヒロさん。なぜ今ご自身でギャラリーを始められたのか、その想いを伺いました。

ー コバヤシさんはコレクターとして有名ですが、なぜ今、ご自身でギャラリーを始められたのでしょうか?

私がもともとアートのコレクションを始めたのは5年くらい前だったんですが、当時、「現代アートのコレクション情報」を発信しているものってなくて。どう買ったら良いのか、どうやって情報を入手して良いかも分からなかったんですよ。

それで「Bur@rt ぶらっとアート」というwebメディアを始めて、自分が得た情報を積み重ねていったんです。そうして情報を発信しているうちに、同じような仲間が意外とたくさんいることに気づいて、リアルな「場」を作りたいと思うようになりました。

《equal》/ 森井沙季  photo by ぷらいまり
《equal》/ 森井沙季(写真撮影:ぷらいまり)

ー 「コレクション」って聞くと、実業家の方々が高額な作品を購入されるようなニュースを目にしがちですが、ご自身と同じ会社員の立場で同じような悩みも感じられている方々も多くいらしたんですね。

「ビッグ・コレクター」のイメージがメディアでよく取り上げられることで、「コレクション」はお金をもっていないとできないような、敷居の高いイメージをもたれてしまったりするんですが。本当は「旅行に行く」「ちょっと良い買い物をする」という程度のお金の使い方の“選択肢”のひとつになり得るもので、誰でもできるものなんですよ。

だけど、そういった作品を買うことができる「ギャラリー」って、日常生活の動線上にないんですよね。それに、教えてくれる人も周りにいないとなかなかその“選択肢”に入りづらくて。だから、そんな初心者に手を差し伸べられるような存在になりたいと思いました。

ギャラリーの場所も、大通りに面していて、若い人たちや感度の高い人たちの導線上にある場所を意識して探しました。アート好きな人が気軽に「アート作品を買うこと」をはじめられる場所をつくれたらいいなと思っています。

大通り沿いに面した明るい空間の1F展示風景(左:五十嵐大地 作品、右:森井沙季 作品)  photo by ぷらいまり
大通り沿いに面した明るい空間の1F展示風景(左:五十嵐大地 作品、右:森井沙季 作品)(写真撮影:ぷらいまり)

まずは 難しく考えずに 観られる場所に

ー それにしても 「biscuit gallery」って、とてもかわいらしい名前ですね。

この名前には色んな意味を込めています。ビスケットは国境・宗教・年齢にかかわらず口に出来るし、食べたら美味しい。小麦粉っていう真っ白な素材が多様な姿に形を変えられるもののひとつだし、色んな味付けもできる。そんな様々なイメージが入っていますが、一番の理由は呼びやすくて「難しくない」ことですね。

私の父 (岡田美術館館長の小林忠さん、コバチュウ先生の愛称で知られる) はアート関係者で、アートを分かりやすく楽しく伝えることで有名なのですが、私が小さかった頃はそれでも難しく感じてしまって、実は私はアートが嫌いだったんです。そんな風に難しくみえてしまうことにもやもやしていて。だから、まずは難しく考えずに見られることを目指したいです。

《あざとく駆け引く》/ 中澤ふくみ photo by ぷらいまり
《あざとく駆け引く》/ 中澤ふくみ(写真撮影:ぷらいまり)

「難しくない」というコバヤシさんの言葉通り、ギャラリーに展示された作品も、一目見て「自宅にお迎えしたいな」とおもうような魅力的な作品ばかりです。一方でそれらは「易しい」作品なのではなく、その作品の中に追求するテーマや技法は奥深い作品ばかり。

ご自身が困惑した経験があったからこそ、初心者に寄り添ってくれるようなbiscuit gallery。まずは気負わず、明るく入りやすいギャラリーの扉を開けてみませんか?

≪恩山昇りを求めて≫/ トモトシ  photo by ぷらいまり
≪恩山昇りを求めて≫/ トモトシ(写真撮影:ぷらいまり)

アートスペース情報

biscuit gallery

公式サイト https://biscuitgallery.com/
住所   〒150-0046 東京都渋谷区松濤1-28-8 biscuit bldg. 1F~3F
営業時間 平日 13:00~19:00 / 土日・祝日 12:00〜18:00
休廊日  月曜~水曜日

 

biscuit gallery Opening Exhibition I

https://biscuitgallery.com/biscuit-gallery-opening-exhibition-i/
会期    2021年3月12日(金)~3月28日(日)
展示作家  五十嵐大地、岡田佑里奈、清川漠、トモトシ、中澤ふくみ、森井沙季

 

biscuit gallery opening Exhibition II

https://biscuitgallery.com/biscuit-gallery-opening-exhibition-ii/
会期    2021年4月1日(木)~4月18日(日)
展示作家  石井海音、木村翔馬、服部芽生、御村紗也、山田康平、山本捷平

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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