音楽・美術の分野で多くの著名人を輩出し、「最後の秘境 東京藝大」なんていう書籍がベストセラーにもなったりと、その世界を覗いてみたいけれども遠い存在にも感じられる東京藝術大学(東京藝大)。その東京藝大が、オンライン上の”芸術のための新しい場所”として「東京藝大デジタルツイン」を2021年2月12日にオープンしました。
「デジタルツイン」とは「サイバー空間上に再現された本物と類似の空間」のこと。学生だけでなく一般の人も立ち入ることができるその ”もうひとつの東京藝大” は一体どんな場所なのでしょうか?
オーケストラを舞台の「上」で鑑賞「DIGITAL SOGAKUDO & PREMIUM CONTENT」
東京藝大には「音楽学部」と「美術学部」がありますが、まずは「音楽学部」のコンテンツを見てみましょう。
「DIGITAL SOGAKUDO」は、東京藝大の誇る音楽ホール「東京藝術大学奏楽堂」を完全な3Dスキャンで再現。奏楽堂のなかでも一際目を引く巨大なパイプオルガンの内部など、普通では見ることが出来ない場所も3Dコンテンツとして潜入できてしまいます。また、演奏会や楽器に関するレクチャーの無料動画も。「奏楽堂にある巨大なパイプオルガンのパイプの本数は?」なんていう素朴な疑問にも答えてくれています。
有料の「PREMIUM CONTENTS」としては、演奏会やスペシャルレクチャーなど現在5つのコンテンツを公開中。演奏者本人に確認してもらい、ヘッドホンで聴くと立体的な音が再現されるなど、こだわりの音質。さらに、指揮者の目の前に置かれた360度カメラで映像が収録され、指揮者視点や演奏者視点など、通常では体験できない視点で臨場感のあるステージを鑑賞できます。
デジタル空間での新しいキャンパスライフ?「DIGITAL GEIDAI β」
コロナ禍で大きく変わってしまったもののひとつが大学生のキャンパスライフ。「DIGITAL GEIDAI β」は、東京藝大の音楽学部と美術学部、それぞれのキャンパスをオンライン上に再現。学生に限らず、一般の人も好きなアバターを使って世界に入こみ、チャットを行うこともできます。コロナ時代の新しいキャンパスライフのかたちのひとつかもしれません。
ユニークなのはそのつくられ方。東京藝大の金田充弘研究室がキャンバスの点群データを、オープンソースとして公開。龍 lilea氏とのコラボレーションによって、点描風の世界に仕上げられたそうです。正確な計測データに基づきつつも、見える景色がすべて絵画作品のようです。ちなみに、ここで聞こえる鳥の声などは実際にキャンパス内で採集した音なのだそう。現実と創作の間の空間ですね。
ひょっとしたら将来的にはこのキャンパスから授業に出席できたりするのかも?など、今後の使われ方にも期待です。
展覧会もトークイベントも、オンラインで心ゆくまで楽しめる「COMMUNITY」
コロナ以降、外出自粛や人数制限でどうしても行きづらくなってしまった展覧会やトークイベント。東京藝大で毎年開催される「卒業・終了作品展」も、今年は入場者を制限して開催されました。「COMMUNITY」では、そうした展覧会やトークイベントなどを公開しています。
現在は「卒業・修了作品展2021 バーチャルツアー」として、オンライン展示を開催中。「Web図録」として、それらの作品や作者の過去の作品なども見ることもできます。
今後はトークイベントの配信も予定しているそう。東京芸大の卒業生で「PUI PUIモルカー」の作者・見里朝希さんと、その師匠で「ニャッキ!」作者の伊藤有壱さんとの対談も近日中に公開予定しているとのことで、東京藝大だからこそ見られるコンテンツにも期待が高まります。
長い歴史と 新しい価値観から生み出す、新たな心の交流の場。
134年の歴史のある東京藝大。その一方で、ICTを活用しながら、新しいコミュニケーションのかたちも模索しています。「世界中の人々に芸術が共にあるより豊かな日常を届けること」、「次世代を担う芸術の若き才能たちに、活躍と鍛錬の場を与えていくこと」を掲げたこのプロジェクト。創作する側にも鑑賞する側にも、嬉しい場となりそうです。
コンテンツ情報
東京藝大デジタルツイン
公式サイト https://dt.geidai.ac.jp/