リノベーションした老舗ホテルで アートとすごす1日を / 白井屋ホテル(群馬県前橋市)

ぷらいまり
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2021.01.15
リノベーションした老舗ホテルで アートとすごす1日を / 白井屋ホテル(群馬県前橋市) photo by ぷらいまり
(写真撮影:ぷらいまり)

いつもの「当たり前フィルター」を外して日常に目を凝らすと、そこは「発見」の宝庫。あえて少しだけ日常から踏み出すことで、一生知ることが無かったかもしれない「発見」と出会えることも。そんな「発見」が、あなたにとても大事な「化学反応」をもたらすかもしれません。

この記事では、あなたの「当たり前フィルター」が外れるきっかけになるかもしれないアートスポットをご紹介していきたいと思います。

今回ご紹介するのは、2020年12月12日に群馬県前橋市にオープンした「白井屋ホテル」。緑にあふれた開放的な建築の中で、まるで自宅のようにゆったりとアートを楽しむことができるホテルです。

歴史ある旅館をリノベーション。藤本壮介さんによる 緑と調和した建築

「白井屋ホテル」の建築は、江戸時代から300年続き、森鴎外、乃木希典などの多くの芸術家や著名人に愛されたものの、2008年に廃業した「白井屋旅館」の建物を建築家・藤本壮介さんがリノベーションしたもの。

大通りに面する「ヘリテージタワー」 photo by ぷらいまり
大通りに面する「ヘリテージタワー」(写真撮影:ぷらいまり)

大通りに面した「ヘリテージタワー」と、裏側の旧河川の地形を活かした「土手」を模した「グリーンタワー」の2つの棟からなります。ローレンス・ ウィナーの作品が施された「ヘリテージタワー」は、真っ白な外観が印象的で、リノベーション前のホテルの様子にも思いを馳せられるような建築。一方、グリーンタワーはまるで丘の中に部屋が取り込まれていような斬新なデザイン。表と裏とで全く印象が異なります。

丘と一体化したような「グリーンタワー」 photo by ぷらいまり
丘と一体化したような「グリーンタワー」(写真撮影:ぷらいまり)

このホテルの再生プロジェクトを主導した田中仁さん(株式会社JINS HD 代表取締役CEO/ 田中仁財団)と建築家・藤本壮介さんは、ホテル再生にあたって幾度も話し合いを重ね、2014 年から6年以上の時間をかけて変化・成長し続けてきたそうで、長期にわたる工事から「前橋のサグラダ・ファミリア」と呼ばれていたというエピソードも。

photo by ぷらいまり
(写真撮影:ぷらいまり)
大胆な吹き抜け空間には 階段や通路が複雑に交差します photo by ぷらいまり
大胆な吹き抜け空間には 階段や通路が複雑に交差します。(写真撮影:ぷらいまり)

「ヘリテージタワー」は、もともと70室以上あったという客室が17室のみを残して大きな吹き抜けに改装。広大な空間に通路・階段がめぐらされ、さらにその間にレアンドロ・エルリッヒの作品≪Lighting Pipes≫が入り組んでいます。館内には客室を仕切る以外には大きな壁がなく、レストランやラウンジといったスペースもすべてSOLSOによって手がけられた多数のグリーンによって空間が仕切られており、より開放感を感じられる空間になっています。

photo by ぷらいまり
(写真撮影:ぷらいまり)

天井は大きな天窓となっているため、館内の光は刻々と変化していき、時間帯によっても建物と作品に異なった表情が見えてくるのも魅力的です。

≪Lighting Pipes≫ / レアンドロ・エルリッヒ photo by ぷらいまり
≪Lighting Pipes≫ / レアンドロ・エルリッヒ(写真撮影:ぷらいまり)
建物も夜はライトアップされ 日中とは違った表情に photo by ぷらいまり
建物も夜はライトアップされ 日中とは違った表情に(写真撮影:ぷらいまり)

1日を通して、違った表情が見られる現代アート作品

館内には世界的に著名なアーティストの作品が多数展示されています。例えば、フロントで出迎えてくれるのは、杉本博司さんの≪海景≫のシリーズの写真。奇跡の海と呼ばれるイスラエルのガリラヤ海を撮影した作品を杉本さんご自身が選んでくださったものだそうです。

海景 ≪ガリラヤ湖、ゴラン≫ / 杉本博司 photo by ぷらいまり
海景 ≪ガリラヤ湖、ゴラン≫ / 杉本博司(写真撮影:ぷらいまり)

エントランスにはリアム・ギリック、ロビーにはライアン・ガンダーの作品も。また、宮島達男さんのデジタルカウンター作品は宿泊者のみ鑑賞可能。2畳ほどの小さな小屋の中で、1組ずつ鑑賞できる作品には時間を忘れて見入ってしまいます。

宮島達男シェッド 外観 photo by ぷらいまり
宮島達男シェッド 外観(写真撮影:ぷらいまり)

各客室にもそれぞれ異なる作品が展示されています。英国の著名デザイナー ジャスパー・モリソン、イタリアの建築界の巨匠 ミケーレ・デ・ルッキ、レアンドロ・エルリッヒ、そして藤本壮介さんによる 4 つのスペシャルルームも。まるで自室のように落ち着く雰囲気の客室の中で作品を見ていると、自分の部屋にもこんな風に作品を飾ることができたら…と、生活の中にアートのある暮らしも想像してしまいます。

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(写真撮影:ぷらいまり)
ROOM 05 ≪Nothing but flowers≫ / 小野田賢三 こちらも部屋の灯りを落とすと違った雰囲気が楽しめる作品です photo by ぷらいまり
ROOM 05 ≪Nothing but flowers≫ / 小野田賢三  こちらも部屋の灯りを落とすと違った雰囲気が楽しめる作品です(写真撮影:ぷらいまり)

徒歩圏内にも様々なアートスポットが

館内がアートに囲まれた白井屋ホテルですが、ホテル周辺でもアートを楽しむことができます。ホテルから徒歩1分ほどの場所には、過去に「ナンスカ」の記事でも展覧会を紹介させていただいた美術館「アーツ前橋」が。建築家・水谷俊博さんにより、かつて百貨店だった建物をリノベーションした美術館。展示室には百貨店だった頃の名残もみられ、その建築も楽しめる美術館です。

アーツ前橋 外観 photo by ぷらいまり
アーツ前橋 外観(写真撮影:ぷらいまり)

アーツ前橋では無料で鑑賞可能なゾーンもあるほか、館内外にもいつでも楽しめる作品も複数設置されていて、散歩しながらふらりと楽しむことができます。

街路樹に風船が引っかかっていると思ったら… ≪ちいさなおとしもの≫ / 山極満博 photo by ぷらいまり
街路樹に風船が引っかかっていると思ったら… ≪ちいさなおとしもの≫ / 山極満博(写真撮影:ぷらいまり)

また、ホテルから徒歩5分ほどの場所には、岡本太郎さんによる幻の作品≪太陽の鐘≫も。この作品が設置された丘などの周囲の環境も建築家・藤本壮介さんによるデザインに基づいたもの

≪太陽の鐘≫ / 岡本太郎 photo by ぷらいまり
≪太陽の鐘≫ / 岡本太郎(写真撮影:ぷらいまり)

「めぶく。」をビジョンとして掲げ、新しく生まれ変わろうとしているという前橋市。白井屋だけでなく、近隣には昭和から愛されてきた商店街があり、その中には新たなコミュニティスペースなども誕生しています。古い物をいかしつつ、新しい文化も融合していく様子が見られます。

このホテルを拠点に近隣を散歩しながら、変化していく街と作品を楽しんでみるのはいかがでしょうか?

施設情報

白井屋ホテル

公式サイト https://www.shiroiya.com/
開業日   2020 年 12 月 12 日
所 在 地   群馬県前橋市本町 2-2-15  TEL: 027-231-4618
客 室 数   25 室 ヘリテージタワー:17 室  グリーンタワー:8 室
アクセス  JR 前橋駅より徒歩約 15 分

ぷらいまり
WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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