「公共トイレ」といえばあまり良いイメージではなく、できれば利用したくないという方もいらっしゃるのでは?そんな中、渋谷区のトイレが世界で活躍する16人のクリエイターの手によって生まれ変わるプロジェクトが進行中です。
この記事では、誰もが快適に使用できる公共トイレを設置するプロジェクト「THE TOKYO TOILET」についてご紹介します。
「THE TOKYO TOILET」とは?
日本財団が渋谷区の協力を得て、性別、年齢、障害を問わず、誰もが快適に使用できる公共トイレを区内17カ所に設置するプロジェクトです。
安藤忠雄さん、伊東豊雄さん、隈研吾さんといった建築家や、佐藤可士和さん、片山正通さん、NIGO®さんといったデザイナーまで、世界で活躍する著名な16人のクリエイターが参画され、2021年のうちに渋谷区の17カ所で、順次公共トイレが生まれ変わっていきます。
現在、そのうちの7つのトイレが完成したので、見てみましょう。
トイレなのにスケルトン?!でも「安心できる」トイレ(はるのおがわコミュニティパーク・代々木深町小公園)
まず、クリアでカラフルな外観が可愛らしいトイレ。でも、トイレなのにスケルトンで中が丸見え?!こちらは、大分県立美術館や富士山世界遺産センターなどの設計者である建築家・坂茂さんの手掛けたトイレ。
中に入ったら丸見え?とドキドキしてしまいますが、鍵をかけると外壁が曇り、外から見えなくなります。
”公共のトイレ、特に公園にあるトイレは、入るとき2つの心配なことがあります。一つは中が綺麗(クリーン)かどうか、もうひとつは中に誰も隠れていないかどうか。新しい技術で作られた鍵を締めると不透明になるガラスで外壁を作ることで、トイレに入る前に中が綺麗かどうか、誰もいないか確認でき、その2つの心配をチェックすることができます。そして夜には、美しい行灯のように公園を照らします。” (THE TOKYO TOILET webサイトより 坂 茂さんコメント)
スケルトンのトイレなんて驚いてしまいますが、見えるようにすることで安全に利用できるしくみになんですね。
休憩所を備えた公園内のパビリオン的トイレ (恵比寿東公園)
タコの滑り台が特徴的な恵比寿東公園に完成したのは、テントのような流線型の屋根が印象的なトイレ。代官山のヒルサイドテラスや表参道のスパイラルの設計者である建築家・槇文彦さんの手掛けたものです。
白を基調にした建物は、閉じた空間ではなく、空間の中に中庭のように木が生えていたり、ベンチがあったりと、建物の「外」と「中」が曖昧な開かれた空間。実際、ベンチでゆったりと休憩なさっている方もいらして、憩いの場のような雰囲気です。手洗い場は大人用と子供用の2種類の高さのものが用意されているという気遣いも。
“タコの遊具によって「タコ公園」と呼ばれる恵比寿東公園に、新しく生まれた「イカのトイレ」として親しまれることを望んでいます” というコメントにも、心が和みますね。(THE TOKYO TOILET webサイトより 槇文彦さんコメント)
遊具やベンチのような温かみのあるトイレ (恵比寿公園)
温かみのある木目のようなコンクリートの壁で仕切られ、都市の風景にも公園の風景にも溶け込むようなこちらのトイレは、インテリアデザイナー・片山正通さん / ワンダーウォール によるもの。
15枚のコンクリートの板を組み合わせた建物は迷路のようで、遊具のような遊び心も感じられます。中に入ってみると広さもあって快適です。
”トイレでありオブジェクトでもある“曖昧な領域ー現代の川屋(厠)”を構築。” (THE TOKYO TOILET webサイトより 槇片山正通さんコメント) というように、日本らしい土や木材で構成されたプリミティブで質素な佇まいをイメージされたそうです。
誰もが安心して利用できる公共トイレへ
こちらのプロジェクト、思わず外観に目がいってしまいますが、単にオシャレであったりユニークであったりというものではなく、例えば車椅子での利用はどこでも可能であったり、オストメイト用設備も備えていたりと、「誰もが安心して使えること」が目的とされているんですね。
デザイン性だけではなく、長い間気持ちよく利用できるよう、清掃をはじめとしたメンテナンスも重要視して取り組んでいくそうです。
実際にこれらのトイレをめぐってみると、タクシーの運転手の方々や配達業の方々、公園で遊ぶ子供たちが次々と利用されていて、安心して利用できる公共トイレの大切さを感じられました。
場所はwebサイトで公開されているので、買い物などの合間に一度利用してみるのはいかがでしょうか?
プロジェクト情報
プロジェクト名 THE TOKYO TOILET
公式サイト https://tokyotoilet.jp/