現代のアーティストのフィルターを通して 様々な視点から作品を見てみよう / 「Re construction 再構築」展(練馬区立美術館)

ぷらいまり
ぷらいまり
2020.09.17

いつもの「当たり前フィルター」を外して日常に目を凝らすと、そこは「発見」の宝庫。あえて少しだけ日常から踏み出すことで、一生知ることが無かったかもしれない「発見」と出会えることも。そんな「発見」が、あなたにとても大事な「化学反応」をもたらすかもしれません。

この記事では、あなたの「当たり前フィルター」が外れるきっかけになるかもしれない展覧会をご紹介していきたいと思います。今回ご紹介するのは練馬区立美術館で開催中の「練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築」展

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動物をモチーフにした植え込みや遊具のある「練馬区立美術の森緑地」の隣にあります(写真撮影:ぷらいまり)

美術館のコレクション作品を ”再構築” する展覧会

早速ですが、この作品はいったいなんの絵でしょうか?絵具がキャンバスの上を流れただけのようにも見えますが…

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《色の跡:松岡静野「舞妓」 / Traces of Colors: Shizuno Matsuoka “Maiko”》 / 流麻二果(写真撮影:ぷらいまり)

では、一歩下がって、隣に展示された作品と並べてみるとどうでしょう?さっきまで物や人には見えなかった左側の作品が突然人物に見えてくるのとともに、並べることで、右側の作品も人物像だけでなくその「色」が際立って見えてきます。

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(左)《色の跡:松岡静野「舞妓」 / Traces of Colors: Shizuno Matsuoka “Maiko”》 / 流麻二果 , (右)《舞妓》 / 松岡静野(写真撮影:ぷらいまり)

「練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築」展は、練馬区立美術館の所蔵作品を再解釈し、新たな視点を提案するという展覧会。青山悟さん、大小島真木さん、冨井大裕さん、流麻二果さんという4名の現代アーティストが、それぞれに所蔵作品を「色」「メディア」「空間」「身体」という観点で再構築した作品を制作し、1部屋ずつで展示しています。

ここは流麻二果さんによる「色」をテーマにした部屋。豊かな色の絵画が並びます。では、他の方々はどのような”再構築”を行っているのでしょうか?

時代や手法、着眼点を変換。青山悟さんと「メディア」。

続く展示室に展示された所蔵作品は、郭徳俊さんによる大統領シリーズの1996〜2006年の写真作品。「『Time』誌の表紙に登場するアメリカ大統領の顔」と「鏡に映る自分の顔」を組み合わせたユニークな作品が並びます。

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(左)《カーターと郭》 (右)《ブッシュと郭》/ 郭徳俊(写真撮影:ぷらいまり)

この作品をもとに再構築した作品を制作したのは、工業用ミシンを使った刺繍の作品を多く制作している青山悟さん。郭さんの作品に対し、ニュース雑誌を素材としているところや 有名性と無名性に対する言及など、自分の作品との多くの共通点を見出した青山さんは、逆に時代や手法などで、「違い」を出すことを考えたと言います。

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《Newsweek Relief》 / 青山悟(写真撮影:ぷらいまり)

例えば、紙に刺繍を施して表現したのは「Time」ではなく「Newsweek」日本版で、その表紙はまさに今を表すような「感染症 VS 人類」。紙以外にも、マスクやレジ袋といったさまざまな素材の上に、タイムリーなテーマをユーモラスに、時に皮肉も交えるように描き出しています。

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(左)《ART IS AVAILABLE FOR PANIC (アート買い占めできます)》(右)《息ができない》 / 青山 悟(写真撮影:ぷらいまり)
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《Come see what’s real.》《Blue Impulse》 / 青山悟(写真撮影:ぷらいまり)

身近なものも、組み合わせや置き方でアートに? 冨井大裕さんと「空間」。

台座の上に、ちりとりや紙屑、お風呂の桶や椅子など。身近なものが、”普通ではない”状態で並んでいます。「空間」をテーマにしたこちらの展示室には、既製品を用いて立体作品を構築する冨井大裕さんの作品が並びます。身近なものが、どこに・どのように置かれるかで、「作品」に変化していきます。

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冨井大裕 展示室風景(写真撮影:ぷらいまり)

一方で壁には、生前の作品の多くが練馬区立美術館に所蔵されている画家・小野木学さんの、方形を多く用いた絵画が並びます。小野木学さんの「絵画」も、平面的な作品であるのとともに、壁一面に並べられることで「空間」を構成するパーツのようにも見え、この部屋まるごとがひとつの作品空間となっているようです。

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冨井大裕 展示室風景(写真撮影:ぷらいまり)

「普段作品を制作する上で、「空間」についてどのように捉えていますか?」という質問に対し、冨井さんは以下のように答えています。

ちょっとしたことで当たり前のことが妙なことになる。とても面白いことです。このことを可能にしてくれる機会が空間であり、芸術だと思います。

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《board paper board (half origami)》 / 冨井大裕(写真撮影:ぷらいまり)

ひとつの作品を起点にしても、別の人のフィルターを通すことで全く違った世界が生まれるんですね。この展示では4人のアーティストのフィルターを通じて新しい世界を覗くことができるようでした。

もし、自分独自のフィルターを通じて作品や日常を見てみたら、どんな新しい世界が見えてくるでしょう?そんなことにもチャレンジしてみたくなる展覧会です。

2020年9月27日(日)までです。

展覧会情報

練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築

練馬区立美術館開館35周年記念 Re construction 再構築

公式サイト https://www.neribun.or.jp/event/detail_m.cgi?id=202006161592286707
会期
【プレ展示】2020年7月8日(水)~8月2日(日)  無料 ※2階展示室のみ
【本展示】  2020年8月9日(日)~9月27日(日) 有料
休館日   月曜日(ただし、8月10日(月・祝)、9月21日(月・祝)は開館、8月11日(火)、9月23日(水)は休館)
開館時間  午前10時~午後6時 ※入館は午後5時30分まで
観覧料
【プレ展示】無料
【本展示】 一般800円、高校、大学生および65~74歳600円、中学生以下および75歳以上無料、障害者(一般)400円、障害者(高校、大学生)300円

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WRITER PROFILE

ぷらいまり

都内でサラリーマンしながら現代アートを学び、美術館・芸術祭のボランティアガイドや、レポート執筆などをしています。年間250以上の各地の展覧会を巡り、オススメしたい展覧会・アート情報を発信。 https://note.com/plastic_girl

Twitter:@plastic_candy

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