「鍋島焼」をご存じでしょうか。その歴史は17世紀、江戸時代にまでさかのぼり、日本有数の磁器のまち佐賀藩(鍋島藩)大川内山において、藩が直営する窯で、同藩・有田から連れられた31人の優れた技師が製造したのがはじまりとされる、高級磁器のことを指します。
その上質で上品なたたずまいから、将軍家や諸大名への献上品、いわば“大名の日用品”として用いられ、その作品が民間に出回ることも、その技術を門外に持ち出すことすらも厳しく取り締まられていました。庶民には、目に入れることすらできなかった焼き物なのです。
一般には知られることのなかった鍋島焼が、観賞用の磁器として広く知られるようになったのは大正時代以降。現在では、私たちが日用品として使える作品も多く出ていますが、どこの窯元も後継者不足などの問題には頭を悩ませているそう。
そんな鍋島焼をより広く知ってもらおうと立ち上げられた、新しいブランドがあります。鍋島虎仙窯による「KOSEN」です。
今回は、鍋島焼の技法を紐解きながら、「KOSEN」の魅力を合わせてご紹介します。
伝統的な3つの技法を、現代のカタチに活かして生かす
鍋島焼には、大きく分けて「鍋島染付」「色鍋島」「鍋島青磁」3つの技法があります。
鍋島染付
染付の濃淡によって細かな模様をかき分ける「鍋島染付」。
職人が一筆一筆を書き上げる青の濃淡によって、味わい深く、しっとりとした印象。
色鍋島
薄い染付によって描いた輪郭線の内側に、赤、薄緑、薄黄の3色で上絵付けをする「色鍋島」。
「鍋島染付」に対して、「色鍋島」はその色づかいによって、ぱっと華やかな印象を受けます。
鍋島青磁
大川内山でとれる原石を使った青磁釉を器の全体にかけて焼く「鍋島青磁」。
独特の淡い水色とも緑色とも表現できないグラデーションや文様が特徴で、どこか温かく、どこか包み込んでくれるようなやわらかさを感じますね。
「KOSEN」は、そんな3つの技法をふんだんに生かした、鍋島焼の新しいブランド。かつての「歴史ある焼き物」というイメージから、模様やカタチを工夫することで「現代らしい」デザインを実現していることがわかります。
生活に潤いを与えてくれる「大名の日用品」たち
鍋島焼の技法が活かされた商品のラインアップは、現在ゴブレット、高台皿、リバーシの3つ。その一つ一つをご紹介いたします。
「KOSEN」ゴブレット
ゴブレットとは、脚付きのグラスのことで、ソフトドリンクやビールを飲むときなどに使われます。ゴブレットの形状は、日本の美術史において最も定番とされてきた「梅型」をベースにデザインされているんだそう。複雑な形状ではありますが、最新の三次元造形技術を用いることで従来の手作業では再現が難しかった美しい曲面仕上げが可能となっています。
「KOSEN」高台皿
先述のとおり、鍋島焼は将軍家や諸大名に献上されていた焼き物ですので、高台(お皿のふち)を高くし、品格高く仕上がっています。
こちらもゴブレットと同じく、「梅型」をベースにデザイン。ゴブレットとペアで揃えたい一品です。また、お皿はやはりその絵柄、色の美しさに目を奪われます。観賞用としてももちろん逸品。ぜひよく見える場所に飾っておきたいと思える一枚です。
「KOSEN」リバーシ
私自身が「ええ、欲しい!」と口にしてしまったリバーシ。もったいなくて、日常的に使うのは少し違うかもしれませんが、インテリアとして手に入れたくなってしまったのです。一つ一つ焼いて仕上げられる駒は、裏表を釉薬のかけわけで緻密に表現。盤面に描かれている七宝文様は、鍋島焼の中にも多く使用されていたものなんだそう。
現代の鍋島焼にして、新たな鍋島。挑戦の先に、挑戦。
「KOSEN」を作り上げる鍋島 虎仙窯の祖は、代々青磁の政策と絵描きを務める家系だったんだそう。現在の鍋島 虎仙窯は、特に青磁焼成の近代化研究に注力し、その結果中国や朝鮮の製品や、窯が藩直営だった江戸時代のころと何ら遜色のない、上質で優秀な青磁を焼き上げています。
鍋島 虎仙窯は、伊万里市内でも珍しい、磁器を焼き上げる「登り窯」を保有する窯元。登り窯での焼成は、薪や木材などを燃料とし、天候や気温、湿度をくみ取りながら、人の手で焚き上げる、非常に難しいものなのだといいます。ですが、その難しさと引き換えに、炎の加減と還元・酸化・中性炎など、手作業でしか起こせない科学反応によって、一つ一つの作品が唯一無二の作品として出来上がるのです。
古くからの、「良いところ」は常に保ちながら、さらに現代に寄り添い、焼き上げる。かつて“大名の日用品”だった鍋島は、今、私たちの手の、すぐそこに届くところにあるのです。
商品情報
ブランド名 KOSEN
販売元 鍋島虎仙窯
公式サイト nabeshima-kosen.jp
販売サイト https://creativecanvas.jp/store