「〇〇さんって姑息(こそく)だよね~」
日常会話でたまに耳にする「姑息(こそく)」。あまり良いイメージには使用されず、人の陰口や悪口を言うときに使う言葉です。
だいだいのニュアンスはわかるんですが、「じゃぁ、姑息(こそく)な奴って具体的にどんな人なの?」と聞かれるとはっきりと答えるのは難しい…。
今回は、日常的によく使用されるけれど、正確な意味についてはアバウトな部分のある「姑息(こそく)」について紹介していきます。
「姑息(こそく)」の意味とは?語源は?
では、さっそく姑息の辞書的な意味から調べていきましょう。
姑息(こそく):一時の間に合わせにすること。また、そのさま。一時のがれ。その場しのぎ。
引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』より
姑息の「姑」には「しばらく」という意味があり、「息」には「休む」という意味があるため、「姑息」の辞書的な意味は「少しの間の間に合わせをすること」となっています。
みなさん、「しっくり」きましたか?
私自身、少し「?」という感じがして微妙に違和感を感じてしまいました。ただ、辞書の「姑息」の後に続く部分を読んで、納得しました。
[補説]近年、「その場だけの間に合わせ」であることから、「ひきょうなさま、正々堂々と取り組まないさま」の意で用いられることがある。
文化庁が発表した平成22年度「国語に関する世論調査」では、「姑息な手段」を、「一時しのぎ」の意味で使う人が15.0パーセント、「ひきょうな」の意味で使う人が70.9パーセントという結果が出ている。引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』より
「そうそうこれ!」って感じがしませんでしたか?
「一時しのぎ」よりもうちょっとネガティブな意味合いを含んだ「ひきょうな」というイメージ。実際、筆者が「姑息」に持っていたイメージはまさに「ひきょうな」というものでした。
でもこれ、実は間違った使い方だったんですね…。
つまり、「姑息な奴」ってどんな性格なの?
「姑息」の本来の意味は、「一時しのぎ、その場しのぎ」というものです。
そのため、本来「姑息な奴」というのは、「一時しのぎばかりする奴」とか「その場しのぎばかりする奴」という性格を表しています。
「仕事でミスをしてしまったとき、原因をしっかりと考えて対策を立てようとせず、その場しのぎの対処法ですませてしまうような人」なんかが典型例でしょうか。
しかし、わたしたちが日常的に使う「姑息な奴」という言葉には、もっとネガティブなイメージがありませんか?
例えば同じように仕事のミスをしたとしても、「誰かのせいにして、自分の責任じゃないような工作をする人」のような。
どうしてこのような違いが生まれてきてしまったのでしょうか。
「姑息(こそく)」と「小癪(こしゃく)」、混ざってない?
このような意味の違い・変化が生まれてきたのかには諸説あるのですが、ひとつは「小癪(こしゃく)」という言葉と混ざってしまったのではないか、という説です。
小癪(こしゃく):こざかしいこと。生意気なこと。また、そのさま。
引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』より
「小癪(こしゃく)」という言葉には、「こざかしさ」や「生意気」といった他人の神経に触ってしまうようなネガティブな意味合いがあります。
「姑息(こそく)」と「小癪(こしゃく)」、読み方の似ている単語を日常生活のなかで用いているうちに、本来、あまりネガティブな意味合いのなかった「姑息(こそく)」にも、「ひきょうな」というネガティブな意味が込められていったのではと推測されています。
そのため、「姑息(こそく)」と「小癪(こしゃく)」自体の使い分けも難しくなってしまっています。
「姑息(こそく)」と「小癪(こしゃく)」、それぞれ正しい例文をご紹介!
「姑息(こそく)」には、「一時しのぎ」という本来の意味と「ひきょうな」という派生的な意味、さらには「小癪(こしゃく)」という紛らわしい言葉もあるため、使用には要注意な言葉です。
「姑息(こそく)」と「小癪(こしゃく)」、それぞれの正しい例文を紹介するので参考にしてくださいね!
「姑息(こそく)」の例文
「結局、一夜漬けみたいな姑息な勉強法は身にならない」
「借金を返済できないため、ほかからさらに借りるという姑息な手段を使った」
繰り返しになってしまいますが、「姑息(こそく)」の本来の意味は「一時しのぎ」。頭の中で「一時しのぎ」と置き換えて考えると理解しやすくなります。
「小癪(こしゃく)」の例文
「まだ新入社員なのにベテランのように振舞いやがって、小癪な奴だ」
「小さな国なのに、小癪にも大国に戦いを挑んだ」
「小癪(こしゃく)」は、「生意気な」とか「こざかしい」とう意味です。「思い上がり」や「失敬」が類語になるため、一緒に覚えておくと区別がしやすくなります。
本来の意味をわかった上で使いましょう!
「お前は姑息な奴だな!」と言われると凄く嫌な気分になりますよね…。本来は対応しきれないで一時しのぎをする小人物的な意味なんですが、現在一般化している意味では、手段を厭わない卑怯な奴と言われている感じがしてしまいます。
しかし、「姑息」自体には罪はありません。また、商談や発表会では誤った使い方はタブーですので、現在の意味を理解しつつ、本来の意味も忘れないようにしてくださいね!