「国有地を、総理夫人が関わっている案件だからと8億2,000万円も値下げして、それは忖度ではないのか?」
「忖度」という言葉がお茶の間でも話題となった森友問題。豊中市にある国有地売却に関して、当時の財務省近畿財務局が政治家の意図を先読みして不当に売却価格を値下げしたのではと世間をにぎわしました。
理事長の籠池(かごいけ)さんとその奥さまのちょっぴりエキセントリックなキャラクターもあって、朝のニュースから昼のワイドショーまで話題独占という感じでした。
最近ではこの「忖度」が一般の人々の間でも使われてきて、最近行われた野球のオールスターでは、阪神の近本選手のサイクルヒットは「忖度」だったのでは?とニュースになるほどです。
でも、実際、この「忖度」ってどういう意味なんでしょう?
今回は、改めて知っておきたい「忖度」の意味について迫ってみます。
「忖度」ってどう読むの?
この「忖度」という言葉は、
「そんたく」
と読みます。ニュースやワイドショーで頻繁に使われているのでご存知の方も多いのではないでしょうか。逆に「『そんたく』ってこういう漢字を書くんだ~」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
「忖度」は、主に国会答弁など政治の世界で使われています。政治家と官僚など上下関係のはっきりしたシーンで使われることが多く、会社組織やクライアントとの関係などビジネスシーンでもよく利用される言葉です。
では、この「忖度」とはどんな意味なのでしょう?次項から、まずは辞書的な意味から探っていきましょう。
「忖度」ってどういう意味?
「忖度」を辞書で調べると次のような意味で載っています。
忖度:他人の心をおしはかること。また、おしはかって相手に配慮すること。「作家の意図を忖度する」「得意先の意向を忖度して取り計らう」
引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』より
辞書的な意味での「忖度」は、相手の心や気持ち、立場を考えて行動するという意味が込められていて、人への配慮を欠かさない日本人の良い心性をあらわしているという印象です。
「忖度」は孔子の時代から使われていた
「他人の心に気を配って、今どういうことを考えているのか?」を考えるということ。
日本人にとって、他人に配慮していくのは社会のなかで生活していくうえで大切なことです。いわゆる「空気を読む」ってやつですね。
「忖度」という言葉の歴史は古く、その起源は古代中国にあるといわれています。
忖度 [出典] 〈詩経(しきょう)・小雅(しょうが)・巧言(こうげん)〉
他人の気持ちを推し量ること。「忖」も「度」も、はかる意。
[原文] 「他人心あり、予(われ)これを忖度(そんたく)す〔他の人は別な心を持っ
ているが、自分はこれを推し量って知ることが出来る〕」
引用元:三省堂辞書
詩経は孔子が編集したといわれる中国最古の詩編です。儒教とともに日本にも輸入されました。
日本でも、もともとは「父の心を忖度する」といったように単に相手の心を推測するという意味で使われていたそうです。
けれど、現在では「忖度」にはマイナスなイメージがついていますよね?
一体、なぜこういうことになってしまったのでしょうか。
変わりつつある「忖度」の使われ方
最近では、「忖度」という言葉に新たな側面が加えられつつあります。
それは、
「上司、立場的に上位の人物の意向をおしはかる」
という側面です。意味的には「他人の心をおしはかる」ことで変わらないのですが、そこに「上司」という側面が加わったことにより、上の者に気に入られようとして、言われてもいないのに先読みする、上司にへつらうという意味が加わってきています。
とくに現在の政治家の発言やニュースなどを見ていると、「相手の意向を察して便宜をはかる」というところまで「忖度」という言葉の意味の範疇に入ってきている例が多々あります。
わたしたちがマイナスのイメージを持ってしまうのは、この上の立場の人にだけ特別扱いをする部分にあるのです。
「忖度」を使うときに注意するべきことは?
言葉は生き物です。
「忖度」という言葉に、「他人の心をおしはかる」という意味に加え、「上司の意向をおしはかり、察して便宜をはかる」という意味まで加わったきたのは、現代社会でこのような状況が増加し、「忖度」という言葉がうまくはまったからなのでしょう。
ですので、日常の生活のなかで「忖度」という言葉を使うときは、上司にへつらうというマイナスのイメージがあることをわかったうえで使用する必要があります。
とくに顧客との会話などのビジネスシーンでは、知らぬうちに相手の気持ちを害してしまう恐れもあるので、慎重に使用することをおすすめします。
ただ、「忖度」はもともとは単に「相手の心をおしはかる」という意味以上のものはありません。「忖度」という言葉に罪はないということも、頭の片隅にでもとどめておいて欲しいと思います。