「あの人って笑顔がニヒルでカッコよくない??」
「ニヒル」という言葉、ときどき耳にしますよね!?
でも、「じゃあ、どういう意味なの?」と聞かれると言葉につまってしまします。そこで今回は、日常で使用するけれど、正確な意味がいまいちわからない「ニヒル」について迫ってみました。
「ニヒル」ってどういうときに使う?
「ニヒル」という言葉は、冒頭のようにニヒルな笑顔という使い方もしますし、ニヒルな男性という使い方もします。
おおよそ、あまり多くは語らないけれどスタイリッシュでクールな男性、また影のあるかっこいい男性を見た時に、「ニヒルな男性」「ニヒルな笑顔」として表現します。
けれど、実はこれ本来とはまったく違う使われ方なんです。
ニヒルの本来の意味とは?
「ニヒル」とは、もともと虚無、虚無的といった意味を持っています。それが転じて冷たく醒めている人、暗い影のある人のことも指します。
ニヒル
1.虚無的。虚無主義的。ニヒリスティック
2.冷たく醒めていて、暗い影のあるさま「ニヒルな男」「ニヒルな笑い」引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』
「虚無」という言葉はあまり聞きなれない言葉ですが、もともと「ニヒル」の語源がニヒリズム=虚無主義という哲学の言葉からきていることに由来します。
ニヒリズム:虚無主義
1.すべての事象の根底に虚無を見いだし、何物も真に存在せず、また認識もできないとする立場。
2.既存の価値体系や権威をすべて否定する思想や態度。ツルゲーネフ・ニーチェ・カミュなどに代表される。引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』
簡単にいうと「すべてどうでもいい」とも言えますよね…。
このように「ニヒル」という言葉には本来ポジティブな意味はなく、何事においても無感情なネガティブな意味が込められています。
「ニヒル=カッコイイ」となった理由は?
「ニヒル」という言葉が日本で使われ始めたのは、1970年代の学生運動の頃です。
大学を中心に活動していた学生たちは時の権力にあらがおうと運動し、「政治には価値がない」という政治ニヒリズムが若者のあいだに広まり、当時の流行語となりました。
当時の「ニヒル」な若者は、どことなく影があって、思慮深く、あまり自分のことを話さない、そんな少し怖いオーラをまとっていました。
で、結構モテてたんです。
モテたいがために学生運動のマネゴトをするエセ活動家もいたぐらいで…。その後、テレビや映画などでも「ニヒル」な男が流行します。松田優作や佐藤浩一が代表格です。
ビートたけしが「ニヒルの革命」っていう歌を出すぐらいですから、一世を風靡していたんです。
現在の「ニヒル」ってどう使われているんだろう
現在では、「ニヒル」は2通りの使われ方をしています。
ひとつは、もともとの「虚無」のニュアンスの濃い使われ方。「どことなく影があり、喜怒哀楽を表に出さず、少し怖いオーラを出していて近寄りがたい」雰囲気の男性。
「ニヒルな笑顔」「ニヒルな笑い」として使われるときは、少しシニカルなニュアンスを含んだこちらの使われ方に近いです。
ふたつめは、より軽いイメージでよりポジティブな使われ方。「スタイリッシュで寡黙な、クールな」雰囲気の男性。
何もかもを否定するような「虚無」の影はなく、少し大人しめだけど、冷めた感じでかっこいいという意味ですね。
年齢層からみると、ひとつめの方が40代以上の層、それより若い層ではふたつめのニュアンスでとらえているイメージです。
「ニヒル」を使うときには注意! とくに外国人の方と話すときほど気をつけて!
「ニヒル」はもともとは欧米から輸入された言葉ですが、外国ではまったくのネガティブなイメージで使われていて、今では和製英語に近い言葉になっています。
日本ではほめ言葉でつかっていても、外国人の方に使うとバカにされていると受け取られるので要注意!!
ニュアンスは若干違いますが、似たような意味合いのほめ言葉は「Cool」なので、外国の方をほめたい時は「Cool」の方を使う方が無難です!