「今日はプロジェクトもすべて終わったから、無礼講で飲み会だ!」
会社での宴会、食事会では何かと気を使いがちですよね。
そんなときに参加している人の気持ちをラクに、もっとお互い打ちとけあう雰囲気つくりをするために『無礼講』という言葉を使います。でも、使い方や受け取り方を誤ると大変なことになることも!?
そんな『無礼講』について解説していきます。
『無礼講』ってどういう意味?
早速、無礼講の意味を調べてみましょう。
無礼講:身分・地位の上下などを考えないで、行う宴会。堅苦しい礼儀を抜きにして行う酒盛り
引用元:コトバンク『デジタル大辞泉』
意味的にも「堅苦しい礼儀を抜きにして」とあるように、慇懃な礼儀は抜きにしましょう~というニュアンスが込められています。
ただ、なかには宴会であれば上司にたいして「無礼」なことをしても許されると考えている人はいませんか?
そんな間違った考えをもっていると痛い目をみるかも!? ここから、『無礼講』の起源や歴史についてまずは見ていきます。
『礼講』なくして『無礼講』なし!?
『無礼講』のもともとの意味は「礼講」を「無」くすことからきています。けっして「無礼」をしてもいいというわけではありません。
古来より神事としての祭りは、神と人が共に同じものを食することが基本でした。
神事では、神に捧げた食物(神饌[しんせん])を、人が「おさがり」として食べるのが常である。これを直会[なおらい]、礼講とよんだ
引用元:心に響く!美しい「日本の言葉」2200 日本のこともっと知りたい!(西東社編集部・編集)
神様がくださるお酒を、上座から順に礼儀にしたがっていただいていく、これが『礼講』。
『礼講』が終わり、自由に祭りの参列者や下座の人々がお酒を飲みまわしていく二次会がが『無礼講』。
『礼講』で行われる手順や儀礼を省略してもいいよ~というだけで、決して無礼をしてもよいわけではないのです。
なんと天皇と一緒に『無礼講』をする宴会もあった!?
鎌倉時代の終わりには、なんと天皇も参加する『無礼講』がありました。後醍醐天皇の御代のときです。
後醍醐天皇は鎌倉幕府をうち倒し、天皇中心の建武の新政をなしとげたフロンティア精神あふれる人物。
倒幕の密談をするために、天皇自ら貴族や鎌倉幕府に不満をもっていた武士を集めます。
天皇や貴族、武士、僧兵といった身分をこえた密談を行えるよう、後醍醐天皇はその場にいた人々の烏帽子や法衣、甲冑などの礼服を脱がせ、女人に酌をさせるという大胆な行動にでます。
この場合も、あくまで倒幕の密談を成功させるために礼服を脱がせただけで、無礼をしてもいいというわけではありません。というか、天皇に無礼とか考えただけでもおそろしいですね。。。
『無礼講』は無いほうが珍しかった?
また、文献に残る日本の宴会では、『無礼講』が無いほうが珍しかったようです。
室町時代の頃に成立した本膳料理の「式三献」では、小杯3杯、中杯3杯、大杯3杯と式の規定だけでも相当な量を飲み、本膳終了後は『無礼講』の酒宴が通例でした。
最後には酒合戦のように飲み比べになるまで飲み、誰かが倒れるまでのむことが多かったのです。
昔からお酒を通じた飲みニケーションは活発だったのですね!
『無礼講』はどんなときに使う?
『無礼講』は基本的に、その宴会の上司の方が使います。平社員や下の役職のものから使われることはありません。
つまり、『無礼講』とは上司がその場の人たちに気を使って発せられていることが多いのです。
また、上司が下の人と親しくなりたいという思いも込められています。これこそ「気遣い」。上も下も一丸となって業務を遂行していくのに必要なコミュニケーション手段です。
ですので、受け取る側としてもそんな上司の気持ちをおもんぱかる必要があります。
『無礼講』でも無礼はNG!
それでは、『無礼講』の宴会ではどう振舞えばよいのでしょうか?
答えは簡単で、宴会で上司が『無礼講』といっても、いつも通りのマナーで飲めばいいんです。
上司が隣にいれば、お酌をする。上座と下座は守る。最低限の敬語を使い、タメ口や呼び捨ては使わない。決して『無礼講』といわれたからといって、上司を「ハゲ」呼ばわりしたりしてはダメですよ!
宴会の翌月に地方へ左遷されることなどないように、『無礼講』という言葉は上司の気遣いと受け取って、いつも通り飲みましょう。