「出血死」と「失血死」って同じじゃないの? 正しい使い方ってナンスカ?

ナンスカ編集部
ナンスカ編集部
2019.05.15
「出血死」と「失血死」

ちょっと物騒な言葉「出血死」と「失血死」。
事件や事故などの死因として耳にすることがあるこの二つの単語、実は「出血死」って言葉はなかったんです!!

「血が苦手〜」と言う方は、これからたっぷり血について語りますので文字だけですが閲覧注意ですっ。

「出血死」が無いってどういうこと?

「出血」と「失血」について調べてみた
「出血」と「失血」について調べてみた

ということで、「出血」と「失血」について調べてみると、色々と違っていました。

「出血」

〘名〙① 血が出ること。赤血球を含む血液の全成分が血管の外に出ること。血液が体外に出るものを外出血、組織内または体内に出るのを内出血、内臓の出血が体外に出るものを喀血・吐血・下血・血尿という。

精選版 日本国語大辞典

「失血」

〘名〙 出血によって血を失うこと。成人では全量の三分の一以上を失うと生命の危険があり、二分の一以上失われると心停止をきたす。

精選版 日本国語大辞典

ちなみに外出血は、転んで「膝から血が出た」、胃潰瘍で血を吐いた「吐血」という体の外に血が出たことそして内出血は足をぶつけて「青痣ができた」など、外に血が出ない出血のこと。

 

こんな感じで、「出血」はとにかく血が出る事みたいですね。1滴でも血管から血液が出たら「出血」になるとのことなので、間違わないように覚えておきたいところ。

対して「失血」は、かなり深刻な状態を指しています。血を失うと書いて「失血」という文字通り、血が失われた状態。

ひざがぱっくり割れて血がドバドバ出血している」……これは、多量の出血があり血を失っている状態。

車にはねられ内臓破裂の疑い」……こちらもかなりの量の出血が疑われ、体内の血が失われているであろう状態。

どちらも、血液が相当量失われている状態です(生死にかかわらず)。

つまり、外出血・内出血に関わらず、多量の血液を失った状態をさして「失血」と呼ぶようです。

「多量の出血」の結果が「失血」と言えば、分かりやすいでしょうか。そして「失血死」とは、多量の「出血」により亡くなること。こちらも多量の「出血」の結果ですね。

となると、「出血死」は間違いってこと?

YES!

「出血死」は残念ながら、言い間違いです。

そもそも「出血死」なんて言葉は意味を知ればないと言うことがわかるはず。出血多量で亡くなるという意味なら失血死が正しい日本語になります。

言い間違いが起こった原因ってナンスカ?

サスペンスドラマにでてくる崖のイメージ
サスペンスドラマにでてくる崖のイメージ

ナゼ言葉の混同が起こったのか? 気になりますよね。そこでもう少し調べてみたらこんな言葉が出てきました。

それはショック死です。

出血性ショック死

出血性ショック死は失血死といわれるもので,外傷や大動脈瘤などの破裂で急激に,あるいは徐々に多量の出血が起こった際にみられる。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版 より抜粋

 

出血量と生命

さまざまな原因で血管が破れ、血管内を流れている血液が血管外に漏れ出て出血します。全血液量の約20%(体重50kgの人で800mL)以上が短時間で失われると出血性ショックとなり、さらに30%(1200mL)以上の出血で生命の危険があるといわれます。

時事メディカルより抜粋

「出血性ショック死」、「出血多量による失血死」出血による死です。つまり「出血死」。

おっと、思わず使ってしまいそうになるじゃありませんか!

「出血多量による失血死」という言い回しが、刑事ドラマや海外のクライムサスペンス物などでよく使われているので、混同されちゃったのかもしれません。

「出血死」は日本語として間違いナンスカ?

出血している女性のイメージ
出血している女性のイメージ

「出血」と「失血」ですが、「出血」の結果が「失血」だと言いました

日本語は名詞に「する、します」を足すと動詞に変化します。逆に動詞から「する、します」を取ると名詞になります。

「出血」に「スル」を足すと当然「出血する」という動詞になります。

でも「失血」に「スル」を足して「失血する」とは言わないんです。

例えば「冷房」と「エアコン」ですが、「冷房する」と言っても「エアコンする」とは言いませんよね? この違いは名詞の意味に「動き、行動や動作」が含まれているかいないかなんです。

「出血」はまさに今血が出ている、動きを表しています。

例えば「冷房」という言葉で考えてみましょう。「房」は~するという動きの意味を持っているので、

「冷房」なら(部屋を)冷たくする
「暖房」なら(部屋を)温かくする

と理解できるでしょう。

冷房と暖房とは異なり、「失血」も血を失った状態ですから、動きも動作もありません。その動きも動作も終わった状態です。

つまり「出血」の結果ということになるのです。その行きついた先が「死」なので、「失血死」となるわけです。

「出血死」と「失血死」。似た言葉ですが、言葉としての違いを理解するとどうして使われない言葉なのか腑に落ちますよね。ちょっと「死」とか「血」とか多様した記事になってしまいましたが、みなさんがなるほどと思っていただければ嬉しく思います!

「ナンスカ?」ではこれからも間違いやすい、混同しがちな「その違いナンスカ!?」な言葉を紹介していきますので、お楽しみに!

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"日常の「何それ?」を楽しむメディア"ナンスカの編集部です。

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