「あの子は誰にでも愛想をふりまいているわよねぇ。」
「あの子は誰にでも愛嬌をふりまいているわよねぇ。」
どちらも一度は耳にしたことのあるフレーズかもしれない「愛嬌(あいそ)をふりまく」と「愛嬌(あいきょう)をふりまく」。一見どちらの使い方でも問題ないように思えますが……実はこれ、正しい使われ方をしているのは「愛嬌をふりまく」の方のみで、「愛想をふりまく」という使い方は間違いなんです!!
正しい使い方・意味とは?
実際に辞書で調べてみましょう。辞書で調べてみると、「愛想をふりまく」が間違った使い方だということが紹介されていたので抜粋します。
× 愛想をふりまく(間違った使い方)
子供が可愛いしぐさや発言をした時などに「愛嬌をふりまく」を使う。この「愛嬌」が「愛想」とほぼ同義と判断されて、「愛想をふりまく」と使われることがあるが、慣用的には誤用。「愛想」は「(お)愛想をいう」「愛想が上手」「愛想がいい」などと使う。
これだけではイマイチ分かりにくいかもしれませんので、これから詳しくご説明させていただきますね。
愛想がいい人って、どんな人?
そもそも愛想とは、いつもにこやかに対応し、人付き合いがよい様子のこと。使い方の例として、「愛想笑い」や「愛想をつかす」などがあります。
愛想がいい人はどんな人? と聞かれたら、
いつもニコニコと笑顔で挨拶したり、話しかけたりしてくれる人
と答えるのが良いかもしれませんね♪
愛嬌のある人って、どんな人?
対して愛嬌を調べてみると、以下のような意味が出てきます。
①にこやかで、かわいらしいこと。
②ひょうきんで、憎めない表情・しぐさ。
③相手を喜ばせるような言葉・振る舞い。
④(多く「御愛嬌」の形で)座に興を添えるもの。ちょっとしたサービス。
使い方の例として、「愛嬌あるお顔」や「愛嬌のある仕草」などがありますね。
ちなみに、「愛嬌のある人はどんな人?」と聞かれたら、
可愛いらしい仕草や振る舞いで、周囲の人を喜ばせるような行動を取る人
ということが説明できると思います。
つまり…
自然と笑顔で対応できる「愛想」については、意図的にニコニコとしているわけではないため、愛想を「ふりまく(能動的な動作)」と表現するのは文章として間違いというわけなのです。子供が「しめしめ、この笑顔でお年玉アップだぜ」と思っているとしたらその時点で「愛想」ではなくなってしまいますからね(笑)。
対して「愛嬌」は、あえてにこやかに振る舞い、意図的に相手を喜ばせようとする気持ちが強いため、愛嬌を「ふりまく(能動的な動作)」と表現することができるのです。ブランド品が欲しい彼女が「愛嬌」をふりまいていたら要注意ということです!
いくつか例を使いながら、習得しよう!
「愛想」はあえて振りまくものではなく、自然とその人から滲み出るもの。意図的に好感を上げようとしているわけではないので、“振りまく”という能動的な表現を用いるのは間違いになります。
例文)彼女は昔から愛想がよく、周囲の皆から好かれていた。
例文)いつも行くコンビニの店員さんは、毎度愛想よく対応してくれるから惚れてしまいそうだ。
対して「愛嬌」は、あえて相手に好感を与えようとするような意図的なニュアンスが強く、能動的であるために「振りまく」という表現を用いることができます。
例文)うちの娘は赤ちゃんの頃から周囲に愛嬌を振りまいて、皆を笑顔にしてくれていた。
例文)愛嬌さえ振りまいておけば、何かあっても周りがフォローしてくれるだろうと思っていた自分が甘かった。
【番外編】会計時の「おあいそ〜!」は間違い?
居酒屋さんやお寿司屋さんなどに立ち寄った際、“そろそろお会計して欲しい”という意味で「おあいそで!」という言葉を使ったことはありませんか? 実はこの言い回し、よく使われがちなのですが、間違って使っていたらとても恥ずかしいフレーズなんです!
「お愛想(おあいそ)」は、「愛想尽かし」を省略した言葉であり、元々は遊郭で使われていた言葉でした。「もういい加減、あの人には愛想が尽きた!」というように今でも使われている言葉ですが、かつては遊郭のお客さんがお気に入りだった女郎に対する愛情をなくして、「もうお店に来たくない!」という状態になってしまったことを「愛想尽かし」と呼んでいたのでした。
なので、飲食店でお客さんがお店側に対して「おあいそで!」というのは、「このお店には愛想が尽きたからもう来ないぞ!」という意味になってしまうのです。
今まで間違って使っていた皆さん、今後は何卒お気を付けくださいませ。
ナンスカでは今後も、間違えた言葉のお話などどんどんお伝えしていきますよ♪ どうぞお楽しみに!