A3,A4,B4,B5…紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密ってナンスカ?

みのきち
みのきち
2020.12.21

普段、私たちが見ているこの世界。
ほんの少しだけ「数学」を知ってみると、意外な奥行きが見えてくるかもしれません。

今回は、「紙」にまつわる数学を紹介します。

書類はA4サイズ、婚姻届はA3サイズ、ノートはB5サイズ…私たちの生活に欠かせない紙のサイズ「A判・B判」。実際に、紙の長さを計ってみたことはありますか?

例えば、A4は21.0cm×29.7cmで、B5は18.2cm×25.7cmです。

何とも中途半端な長さだと思いませんか?A4は20cm×30cm、B5は20cm×25cmにしてしまった方がわかりやすそうですよね。しかし、この中途半端な長さには、数学的で合理的な秘密が隠されているのです!

無駄がない!サイズ同士の美しい関係性

A判にはA0、A1、A2、A3、A4、A5…と様々なサイズが存在しています。実は、A判のそれぞれのサイズ同士には、ある一定の関係性があるのです。

例えば、A4の紙2枚の長辺を合わせて、2倍の大きさの紙をつくってみます。

紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密@ナンスカ

そうすると、この紙がちょうどA3になるのです。逆に言えば、A3の半分がA4ということになっています。

この関係性は「A0とA1」、「A1とA2」、「A2とA3」・・・と、どの組合せに対しても成り立っています。つまり、A0の半分はA1、A1の半分はA2、A2の半分はA3、A3の半分はA4…という関係性になっているのです。

例えば、A3・A4・A5の関係性を図にしてみると、下のようになります。

紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密@ナンスカ

上の図の右側のように、A5の紙2枚とA4の紙1枚を組み合わせてみると、おおよそA3の大きさになります。

では、このような関係性が成り立っていることに、一体どんなメリットがあるのでしょうか?

それは「裁断のときに無駄がないこと」です。

例えば、1枚のA2の紙から、1枚のA4の紙を作る場合を考えてみましょう。まず、A2の紙を半分に裁断します。そうすると、A3の紙が2枚できます。

紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密@ナンスカ

このA3の紙の1枚を、半分に裁断します。そうすると、A4の紙が2枚できます。

紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密@ナンスカ

作りたかったのは、A4の紙1枚だけではありますが、裁断の際に残ってしまったA3の紙1枚、A4の紙1枚も「A判の紙」として活用することができますよね。つまり、無駄がないのです。

この関係性はB判についても、同じように成り立っています。

比率は、黄金比ならぬ「白銀比」

実は、A判・B判どちらも「全ての紙の縦横の比率が同じ」という秘密が隠されています。

紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密@ナンスカ

そのため、A判・B判の中には、妙に細長~い長方形が存在する…なんてことはありません。A0もA1もA2もA3もA4も全て同じ縦横の比率。大きさは違いますが、全て同じ形状の長方形です。

大きさは違うけれど同じ形状…つまり、マトリョーシカのようになっているのです!

さらに、先ほどの話と合わせると、「紙を半分に裁断しても縦横の比率は変わらない」ということになります。

この不思議な比率…一体、具体的にはどんな数の比なのでしょうか?

中学校で習った数学を思い出して、実際に求めてみましょう。数学がどうしても苦手な方は、数式の部分を読み飛ばして、「そう!」の後から読んでみてくださいね。

紙のサイズに隠された数学的で合理的な秘密@ナンスカ

元の紙のサイズの短辺を1、長辺を\(a\)とおきます。この紙を半分に裁断すると、短辺が\(\frac{a}{2}\)、長辺が1となります。比率が変わらないということは、「短辺:長辺」が変わらないということ。つまり

\[
1:a=\frac{a}{2}:1
\]

が成り立っているということですよね。ここで、「内項の積=外項の積」を使ってみると

\[
a\times\frac{a}{2}=1\times1
\]

となります。両辺を2倍してみると・・・

\[
a^2 = 2
\]

という式が出てきます。「2乗すると、2になる数」って、記憶の片隅にありませんか?

そう!「\(\sqrt{2}\)」です。つまり、A判やB判サイズの紙の比は、「\(1:\sqrt{2}\)」になっているのです。

実は、この「\(\sqrt{2}\)」、ちょっとクセモノで

\[
\sqrt{2}=1.41421356\cdots
\]

となっており、キリの良い数ではありません。そのため、実際の紙の長さにしたときに、どうしても中途半端な長さになってしまうのです。

この「\(1:\sqrt{2}\)」の比は「白銀比」「大和比」と呼ばれており、日本古来の建築でも使われていると言われている、とっても便利で美しい比です。

私たちの身近なものに、実は深~い数学が隠されているんですね!

みのきち
WRITER PROFILE

みのきち

東京生まれ東京育ち。大学と大学院で数学を専攻。最近は、数学の命題をプログラミングして具体例を確かめることにハマっている。入浴剤とドリップコーヒーを集めるのが好き。ドイツ語の勉強中。散歩がてらパン屋を見つけると入ってしまう。

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