“くまはぎ”という言葉を初めて聞く人も多いかもしれませんね。これは、熊が水分を舐めるために樹皮を剥がす行為をさした言葉です。
近年、くまはぎ被害によって、何十年も育ててきた木を木材にできないまま廃棄するケースが深刻な問題となっています。
とはいえ、林業や森、森の生き物のことって、正直山と離れた場所に住む人たちにとってはいまいちピンとこないものですよね。
そこで、くまはぎ被害で木材としての使用価値をなくした木を薪に加工することで、都会に住む人たちにも山とのつながりを感じてもらいながら、くまはぎ被害を減らしていこうというのが「くまはぎプロジェクト」です。
誰もが持続可能な森づくりに参加できる仕組みや、くまはぎを減らすためのプロセスをしっかり解説していきますね。
熊に皮をはがされ伐採した木を薪として活用
「くまはぎプロジェクト」は、 くまはぎの被害を受けた木をキャンプ用の薪として販売し、収益の一部を里山の管理に使用する循環型プロジェクトです。
くまはぎを行うツキノワグマには、皮の内側にある水分や養分をたっぷりと含んだ柔らかい場所を舐めるために木の皮を剥ぐ習性があります。
しかし、皮を剥がされた木は弱ってしまい、腐ったり枯れたりするため木材としての価値は大幅に低下。
輸送費等を考えると赤字になるため、廃材として捨てられることも珍しくありません。
何十年もかけて大切に育ててきた木を捨てるのは、林業にとっても大打撃です。
そこで、くまはぎの被害木を薪として販売し、売り上げの一部を里山整備に使うことで、山や資源を守りながら、熊と共生する環境を整えていくことを目指したのが「くまはぎプロジェクト」です。
くまはぎ被害をなくすために
くまはぎは近年始まったことではありません。しかし昔は、今ほど問題視されていませんでした。
被害増加の原因として考えられるのは、里山が荒廃したことで、人と熊の生活圏の境目が曖昧になっていることです。
定期的に手入れをされた里山は明るく見通しがよかったため、基本的に臆病な熊は人に遭遇しにくい山の奥に住んでいました。
しかし、外国産木材の台頭や木材建築の減少により国産木材の価格が大幅に下がると、次第に林業人口が減り、全国各地に手入れされない暗い森が増えたことで、熊があちこちでくまはぎを行うようになります。
里山の整備は、貴重な木材を傷つけられないようにするためだけでなく、人の住む場所を熊に知らせて、平和に共存していくためにも大きな意味を持つんですね。
くまはぎの薪は、アウトドアにも使いやすい!
「くまはぎプロジェクト」から生まれたくまはぎの薪は、主にスギなどの針葉樹。
着火しやすく火力もあるため、アウトドア初心者でも扱いやすいと言われています。
針葉樹の薪は、綺麗な長方体に整えられていることが多いのですが、くまはぎの薪では、木の皮がついた不揃いなものになっています。
くまはぎの跡をあえて残し、森のリアルを味わうスパイスにしているのが面白いですよね。
また、専用の箱に入っているのも注目したいポイント。
持ち運びやすいだけでなく、木クズや皮クズが車に散らばりにくいので、帰宅後の掃除が格段に楽になりますよね。
くまはぎの薪は森と人間をつなぐ存在に
くまはぎをさせないのではなく、人と熊の生活圏を分けながら共存していくための環境づくりを目指す「くまはぎプロジェクト」。
でも、もう1つ目指しているのが、“森に関わる人を増やす”ことです。
手入れされず木が生い茂り放題の山は、地面に光が届かなくなることで、新しい植物や生命体が育たなくなり、土や地盤が弱っていきます。
その結果、地滑りなどの土砂災害や洪水を引き起こし、山から離れた場所でも多くの人たちが甚大な被害を受けることに。
里山の再生は、熊だけでなく私たちの暮らしにも重要な意味を持ちます。
どんなに時代が変わっても、山と人間は切り離して生きていくことはできないのかもしれませんね。
「くまはぎプロジェクト」は、誰もが里山づくりに参加できる新しい林業のカタチと言えるのではないでしょうか?
プロジェクト情報
プロジェクト名 くまはぎプロジェクト
販売元 株式会社桑木
公式Instagram https://www.instagram.com/kuwamoku_and/
Makuakeプロジェクトページ https://www.makuake.com/project/kumahagi/communication/detail/1083725/
※プロジェクトは現在終了。くまはぎの薪はAmazonにて購入可能。