仕事で使う書類から、コピー用紙、資料で配られる冊子、学生の時に使っていたノート…
現在、日本で最も多く使われている紙といえばA4サイズ。
普段はそれがA4であることすら意識しないほど、私たちの生活に身近なサイズですよね。
今回ご紹介するのは、見慣れたA4サイズで世界を切り取ることによって、私たちが普段あまり意識することのない“認識する力”にアプローチするプロダクト「A4/ZINE」です。
A4で世界を見てみたら「A4/ZINE」
この写真をみて、なんだか不思議な感覚になりませんか?
「道路に置かれた、これは…徐行標識の一部かな?でも四角いな。これって三角形だったよね?」
こんな風に考えたのではないでしょうか?
でも、どう考えても「徐行」とは読めません。徐行の標識は確かに三角形です。標識は道路に置いてありません。
じゃあ、どうしてこれを「徐行の標識」って認識したのでしょうか?
「A4/ZINE」は、周囲に存在する様々なものをA4(210×297mm)サイズのフレームでトリミングしたプロダクト。
あらゆる対象物でグラフィックを作り、その中から選り抜いた100作品が製本されています。
手掛けたのは、デザイナーの八子智輝さん。
多摩美術大学でデザインを学ぶなか、「A4/ZINE」は在学中に発表された作品です。
認識の不思議に、驚いたり、呆れたり
お次は、こちらをご覧ください。透明な袋に、青とピンクのラインが入っています。
これはわかりやすい!私も愛用しているジップロックバッグですね。
サイズはいろいろありますが、これはA4に収まっているので、すぐに認識することが出来ます。
では、こちらはどうでしょうか?
縦長のグレー地に、青の角が丸い長方形が重なっていて…途中で切れている感じ。
隣は、緑地に丸みのある「文」という字が白抜きになっている。左上にちょっとグレーも見える。
「A4/ZINE」は、物を原寸大でA4サイズにトリミングするだけでなく、最小限で伝わるまでに色や形を簡略化しています。
あえて情報を最小限に抑えることで、想像力がブンブン刺激されるうえに、いつも私たちが色や形のどこを見てそのものと認識しているのかが浮き彫りになってくるという面白い仕掛けですよね。
ちなみに正解は、どちらも電柱に設置してある街区表示板(左)、スクールゾーン表示板(右)でした。
想像力と記憶を照らし合わせて、見事正解することはできたでしょうか?
どこの町でも見かけるのに、「えーこれってこんなに大きかった?」と思いませんでしたか?
よく知っているようで、案外適当に認識しているな~と笑えてきました。
これ、大人より頭のやわらかい小学生の方が正解するかもしれませんね!
親子で勝負してみるのも楽しそう!
本という形にした理由とは?
もうひとつ「A4/ZINE」で注目すべき点が“紙の本”であること。
今やアートの世界でもデジタル化が進む中で、あえて紙にプリントし、データが主流の時代に本という物体にする。
私なら「データ化してオンラインでシェアしやすくした方が、話題にもなりやすいし、もっとたくさんの人に楽しんでもらえるんじゃないの?」なんて安易に考えがち。
しかし、そこには八子さんの丁寧な考察と、徹底的な表現方法の追求が背景にありました。
まず、大前提として「A4/ZINE」は“A4サイズにトリミングしていること”がポイントです。
ところが、仮にデータ化した同じ作品をスマホで見た時、スマホの画面サイズに小さく表示されるか、A4の一部分しか表示されないかのどちらかになってしまいますよね。
また、ポスターのように大きくすれば、“対象物を実寸大で切り取る”というテーマから外れてしまいます。
つまり、確実にA4サイズであることが「A4/ZINE」には重要でした。
さらに、人は一度に全ての作品を見ると、それは全体としてまとめられた一つの情報として処理されてしまいます。
一方、最大でも2枚しか見られない本という形では、作品をひとつひとつ認識し、想像していく過程を楽しむことができます。
つまり時代に逆行するかに思える“本”という形は、対象物を実寸大かつA4サイズで確実に表現するための最高の方法ということがよくわかりますね。
わたしたちの認識って、実はけっこう曖昧かも
大小さまざまな身の回りのものを、A4サイズで切り取ると、よく知っているはずなのに、初めて本当の大きさを知ったような不思議な感覚になりました。
見慣れたサイズに、見慣れたものを掛け合わせると、まるで見慣れないものに変身してしまうという現象がとっても面白いですよね。
私たちはよく知っていると思っているものでさえ、本当はよく知らないのかもしれません。
商品情報
商品名 A4/ZINE
公式サイト http://8koweb.com/A4ZINE.html