終末時計が100秒を切ったことが話題となった私たちの住む地球。
これからは、限りある資源を大切にしながら、あらゆる分野でより持続可能な素材やモノが必要とされてくるでしょう。
実は私たちが気付きにくいところで、すでに未来につながる新素材が活用されているのはご存じですか?
今回は、私たちの身近にあるガラスをリサイクルして作る「スーパーソル」をご紹介します。
別名“呼吸する石”とも呼ばれる次世代の素材を、じっくり見ていきましょう!
ガラスから生まれた新素材「スーパーソル」
「スーパーソル」は、ガラスびん等を細かく砕き、発泡添加物を加えて高温で焼成することで作られた、いま大注目の次世代素材。
軽量・透水性・保水性・断熱性・耐火性など、数多くの魅力的な特徴をもっています。
一見石のようにみえますが、多孔質と呼ばれる性質を持った「スーパーソル」には空気を含む小さな穴が無数にあいています。
お風呂場で使うような軽石のイメージに近いかもしれませんね。
この無数の穴が、空気や水をまるで呼吸するように調節しているので、“呼吸する石”とも呼ばれているんですね。
気泡の大きさや量は、用途によって作り分けることも可能なため、土木・建築資材や、農業、水質浄化、断熱などあらゆる分野で活用され、循環型社会を実現していくために非常に重要な役割を担っています。
私たちが見ることのできない地中、そう、あなたの足元では、すでに「スーパーソル」が活躍しているかもしれませんよ?
地球から生まれて、地球に還元するリサイクルの仕組み
「スーパーソル」の魅力は、その原料や製造過程にもあります。
現在多くの自治体では、資源回収の際に空き瓶の色分けを必要としているのですが、その理由を知っていますか?
実は同じ瓶でも、茶色や緑色などの色付きの瓶は、瓶として再利用することができないんです。
「スーパーソル」は、ソーダライムガラスに分類されるあらゆるガラス製品を原料にすることができるので、仕分けの手間を減らすことを可能にしました。
ガラスの主原料は、珪砂という土壌に多く存在している天然鉱物です。
よって、ガラスの原料を再利用する「スーパーソル」自体もケイ素を中心とした地球に元から存在している成分で構成される自然由来の素材といえます。
また製造過程に発生するCO2の排出量も、瓶から瓶を製造するのに比べて約3分の1以下に抑えられるという結果も。
つまり、土壌成分から生まれたガラスを、「スーパーソル」に再利用することで、環境への悪影響が限りなく少ない天然鉱物性の素材として活用することが出来るんです。
実際に、どんな風に使われているの?
グラウンド
私が学生の頃、雨上がりのグラウンドって、あちこちに水たまりが出来ていて、遊びたくても靴が泥だらけになるので避けていた記憶があります。
でも、土の下に「スーパーソル」の層を作ることで、水はけがよくなり、いつでも心地よく走り回れるグラウンドを実現することが可能に。
泥だらけの靴を洗う苦行からも解放されるかも…!?
農業
農業経験のある私としては、農業資材としての可能性も外せませんね!
作物を育てるうえで、水はけって悪くても良すぎてもダメという微妙なバランスを必要とされることが多いのですが、微妙だからこそ難しいんです。
でも「スーパーソル」なら、目的に合わせて形状を選べるし、土壌改良材としても使いやすいはず。
なにより、軽いというのはものすごいメリットです。
大量に運搬する土や肥料は身体への負荷も大きく、身体を痛める原因のひとつでもあるので、土の1/5~1/6の重さで扱うことのできる「スーパーソル」は、本当に期待できる素材といえます。
持続可能な社会で「スーパーソル」が呼吸する
「スーパーソル」は、クリエイティブな世界でも活躍が期待されています。
形成前の原料に釉薬を配合することで、ぬくもりのある柔らかい色味に仕上げられる上に、UVプリンターを使えばプリント加工もできるため、可能性はさらに広がります。
素材の特徴を生かしたディフューザーやコースター、アイデア次第で用途はまだまだありそうですよね。
プロダクト開発を手掛ける多くのクリエイターが集う「canvas」というサイトでは、スーパーソルの加工のしやすさと、多孔質による吸水・蒸発の特徴からイメージできる“呼吸する石”をテーマとしたプロダクト案が募集されるなど、アートやライフスタイルの分野でも活躍をみせています。(プロジェクトページ:https://creativecanvas.jp/projects/p00005127/)
きっと、そんなに遠くない未来に、「スーパーソル」は私たちの暮らしに当たり前にある素材になるのではないでしょうか?