クリエイターAKR、疾風怒涛の3か月―エブサン相模大野銀座店 始動編―

今井 美枝子
今井 美枝子
2019.11.15
2019年11月1日11時にオープン

2019年11月1日11時、SNSで告知していた通り、AKRがオーナーを務めるショップ「EVERYDAY SUNDAY」(エブリデイサンデー:通称エブサン)が相模大野銀座にオープンしました。
この日は新店の門出を祝うかのような晴天。こぢんまりとした、コージーな雰囲気の店舗は日の当たる白壁が目にまぶしいほどです。

「EVERYDAY SUNDAY」相模大野銀座店 オープン初日

EVERYDAY SUNDAY相模大野銀座店にて。リアルまーくんの風情を漂わせたこの男性を出迎えるくまのまーくん。男性は近在に住むエブサンファン。

この日もまたショップのオープンを祝うべく、遠方からエブサンファンが駆け付けます。聞けば仕事を休んで青森から上京したとか。ブログで新店舗の道筋は案内されてはいたものの、神奈川県相模原市のこの商店街をピンポイントで訪れるのは至難の業と考えたのか、相模大野エリアに住むエブサンファンに道案内してもらっての登場でした。

青森からやってきたエブサンファン。彼女は元ぼくのりりっくのぼうよみのファンで、肩にかけるかばんもAKRの作品。

新店のオープンは渋谷のポップアップストアのクローズからわずか3日のこと。多忙を極めていることから先延ばしされる可能性がなかったわけではありません。それでもこの日にきっちりと間に合わせたのは、SNSでの告知を信じて足を向けてくれる客がいて、その人が万障繰り合わせて来てくれているということを十分理解しているから。

ネットでも商品を購入できるこのご時勢で、わざわざ実店舗を作っている意味がそこにはあるのかもしれません。
彼自身が、エブサンのファンに会ってみたいという気持ちがあるからでしょう。

自意識過剰程度がちょうどいい、接客術

レガロ店閉店のとき、エブサンファンがたまたまAKRの不在時に来た、という場面に何度か出くわしたことがあります。ポップアップストアと新店準備のため、AKRが不在になるのは自明の理ではあったものの、お客にとってはそんなことは関係ない。AKRに会えなかったことを残念がる客がいたことは確かです。

そのことを憂えてか、スタッフの誰かが進言したのかもしれないのですが、以来、ポップアップストアでも新店でも、AKRの不在をTwitterなどで知らせています。お客様に対する丁寧さと律儀さが伝わってくるようです。

長年、服飾と雑貨の店を続けていたからこそ、お客様のありがたさを強く感じているのでしょう。自意識過剰だとアンチな見方をすればそれも通ります。しかしそのくらいの接客術がちょうどいいのではないかと思うのです。エブサンのまーくんの魅力はその背後に見え隠れするAKRというクリエイターの魅力につながっているのは確実だからです。彼に惹かれるファンに対して、会いに行ったのにショップにいなかったというやりきれない絶望感は与えてはならないのです。

自分の作品や商品の“売れ方”をわきまえているのは正しい。“売り方”をショップオーナーは選択することはできても、“売れ方”は選べないのですから。おそらく、“売り”はまーくんなどのキャラクタ―をあしらった服飾雑貨だったのですが、自分でも思いもよらぬ“売れ方”をしているというのが本当のところなのではないでしょう。

伊勢丹相模大野店閉店で変わる?相模大野銀座商店街

エブサン新店舗の所在する相模大野銀座商店街とはどんなところでしょうか。

11時前の相模大野銀座。とてもこぢんまりとして静かな商店街だ。

相模大野銀座商店街は相模大野商店街振興組合に所属する商店街の一つで、小田急相模大野駅を降りてボーノという商店街を抜けた先にある、小さな商店街です。80余りの店舗が通りの両サイドに軒を連ねています。

お世辞にも人通りが多い、にぎやかな通りとは言えません。しかしこうした景色はどの商店街にも共通するもの。伊勢丹相模大野店を失った今、レガロビルの所在するコリドー商店街もまた閑古鳥が鳴いているのが現状です。

一方、伊勢丹のクローズにより人の流れが変わり、コリドー商店街から相模大野銀座に流れてくるかもしれないとの見方もありました。

相模大野銀座商店街ではAKRと年代を同じくする若い世代の出店が目立ちます。いずれもAKRの店とは一線を画す喫茶店やカフェです。むしろAKRの店はほかのどの店舗ともかぶらない……と言うよりは、ほかの店舗とは全く性質を異にしているのです。その独自性からおそらく彼の店こそが新しい人の流れを作る可能性を秘めています。

この商店街についてはエブログで詳細が語られています。

http://blog.livedoor.jp/nico__25/archives/1959328.html

このブログの中にあるように、飲食店とヘアカットの店舗がひしめき合う小さな商店街です。洋品店はいくつかあるものの、ちょっと高級なセレクトショップのようで気軽に入るというわけには……。少し敷居が高いかもしれません。

この通りでの新店舗の出店はかなり考えた結果の決断だったと言えます。聞くところによれば、ぎりぎりまで新店舗の契約を行わなかったとか。それが不動産屋さんとの駆け引きなのか、新店舗経営に対する逡巡だったのかはわかりませんが、筆者は確かに「このお店をやってみたら面白いだろうな、と思って」と言うAKRの言葉を聞いています。ショップの経営はどうしても捨てられないものだったのかも。
彼の実店舗へのこだわりは思いのほか深く強いと言えるのです。

相模大野店でのお買い物特典であるはがき。販売もされているポストカードだが、数量限定で1000円以上お買い上げの方にプレゼントしている。

渋谷BASEでのプロモーション成功が後押しに

レガロ店閉店後の余韻に浸るのもつかの間、新店舗の準備を着々と進めていたAKR。オープンまでの1か月は休みどころか、睡眠時間を削ってプロモーションと店舗の経営に時間を捻出する忙しさだったようです。

人気のエブログは9月25日以降、2回ほどの更新で終わっています。この間、活躍したのがTwitterとInstagramです。少なくともエブサンをフォローしていれば、情報が事細かに入ってきます。徐々に仕上がっていく店舗の様子を見たりするのは、リアリズムにあふれている。エブサンファンにとってはリアルなAKRの生活の一部を垣間見られるだけでなく、新店舗開店後のエブログへの期待を大いに膨らませてくれます。

新店舗でも限定グッズを用意。この特別感がファンにはたまらない。

新店舗用のグッズの中にはオープン当日入荷のものも

AKRのTwitterからもわかるように、新店舗は狭小なものだといいます。

オープン初日、取材をすべくオープン少し前に大野銀座へ駆け付けたのですが、カメラを抱えて入るとそれだけでほかのお客様に迷惑がかかるおそれがあるため、遠目から店の様子を見るにとどめました。通路と思しきエリアまで商品が陳列された結果、すれ違うのも怖いくらいになってしまっています。

実店舗の様子や狭小さは、ぜひご自身の目でお確かめください。

また、当日は商品すべてがそろっていたわけではなく、オープンからしばらくして大きな段ボールが宅配されてきました。どうやら商品の到着が当日になってしまったものもあるようです。スタッフと一緒にAKRがあわてて開梱して商品を並べています。

オープンを祝う花束は……すべて身内?

オープン当日には開店を祝うお花が届けられていました。宛名を見ると、すべてどこかで見たようなネーム。“エブサンスタッフ一同”はともかく、“活動休止ズ”も。“活動休止ズ”はAKRが生み出したエアバンド(架空のバンド)です。これもまたAKR流のシャレでしょうか。

開店祝いの花束はほとんど身内からのもの。

オープンしてから1週間、エブサンファンが三々五々訪れる新店舗は、開店を祝う品物でレジ周りがいっぱいになってきています。この様子もAKR流に“事故感出てきた”と言いえて妙なコメントを入れています。

https://twitter.com/EVERYDAYSUNDAY_/status/1190852792820256768

エブログの復活を強く期待するエブサンファン

つい先日、定休日などが決定しました。第2、第4の水曜日に定休日を設けるようにしたようです。エブサンはその店名とは裏腹にほぼお休みのない対面販売を行ってきているだけあって、定休日の設置はある意味新鮮でした。何となく休みに不慣れなAKRが見えるようで、それもまたエブサンファンにとっては面白いのかもしれません。

そして待たれるのがエブログです。エブサンの魅力は何といってもそのブログにあります。新店舗開店後の一発目は、渋谷ポップアップストアの思い出でした。その後のブログを、ファンは首を長くして待っているというのが現状です。

これだけ忙しくては、笑えるブログを信条とするAKRにとって、ブログをつづることはなかなか厳しい状況なのかもしれません。とにかく休ませて、ゆっくり寝かせて!というのが彼の心の声かもしれません。

LINEのクリエイターズスタンプ。しろくろくまのまーくんシリーズ第6弾『絶対布団からでないまーくん』には共感を覚える。

https://store.line.me/stickershop/author/43326

レペゼン相模大野 小さな世界で世界発信を続けるエブサン

新店舗でもAKRのゆるりとした、それでいて毒をちょっぴり含んだユーモアは相変わらず。新店舗では写真撮影用のポップやパネルもほぼすべて新調し、希望すれば写真を撮影し、Twitterに独特のコメント付きで投稿してもらえるようです。

写真をTwitterに載せる、載せないの切り分けをスタッフに尋ねたところ、はっきりとした回答は得られませんでした。AKRの中では決まっているようなのですが、筆者は一度もその恩恵?に預かったことはありません。

ブログで地道にファンを増やしていったAKRにとっては、メディアに頼らずともファンを増やし、魅了し続ける自信があるのでしょう。むしろメディアなどはちょっと厄介でうるさい存在らしく、長いものには巻かれない、メディアのおだてには乗らないという気骨さえ感じられます。

もちろんそれはクリエイターとしての一面。ショップオーナーとしての彼は、レガロ店での印象そのままに、店の隅に静かに待機していて、丁寧で明るく客に接してくれています。客が望めば相変わらず楽しく対話してくれます。出しゃばりすぎないクリエイター兼ショップオーナー、それがAKRなのでしょう。

新店舗開店にナンスカ編集部もお酒を届けた。

クリエイターAKRもエブサンも、ファンなくしては成り立たない。それどころか、当オウンドメディアでニューカマーとして注目することもなかったでしょう。この不思議なエブサンのグルーピーは互いに特段の接点はないけれど、AKRというアイコンによって深く強くつながっているのだと感じました。

いよいよ次回はクリエイターAKRの不思議について、掘り下げることができればと考えています。ただ恐ろしくシャイな一面を持つ彼が、実際どこまで本音を聞かせてくれるのかは未知数。

むしろ好奇の目を向けられることを極力嫌う向きもあるので、プロフィールはほとんど明かせずに終わる可能性もあります。今からどうなることか、乞うご期待。

店舗情報(2019年11月11日時点)

店舗名  EVERYDAY SUNDAY 相模大野銀座店
住所   神奈川県相模原市南区相模大野6-13-6 メゾン・ドゥ・レーヴ2号室
営業時間 11:00~20:00(今後変更の可能性あり)
定休日  第2、第4水曜日+α(今後変更の可能性あり)
オンラインショップ http://everydaysun.thebase.in/

今井 美枝子
WRITER PROFILE

今井 美枝子

1965年生まれ。化学メーカーのテクニカルライターと車両板金塗装専門誌記者を経て、フリーランスライターへ。チームでインタビュー記事や企画など、コンテンツのプロデュースも行っています。

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