いつもの「当たり前フィルター」を外して日常に目を凝らすと、そこは「発見」の宝庫。あえて少しだけ日常から踏み出すことで、一生知ることが無かったかもしれない「発見」と出会えることも。そんな「発見」が、あなたにとても大事な「化学反応」をもたらすかもしれません。
この記事では、あなたの「当たり前フィルター」が外れるきっかけになるかもしれない展覧会をご紹介していきたいと思います。
今回ご紹介するのは、2022年10月11日に六本木に新しくオープンしたアートの複合施設「ANB Tokyo」。大きな美術館や著名なギャラリーも多い六本木で始まる新しいアートの試みとはどのようなものなのでしょうか?オープニング展示の「ENCOUNTERS」展を通じて見ていきたいと思います。
ANB Tokyoとは?
六本木交差点近くの元カラオケ店のビルを改装してオープンしたANB Tokyo。コミュニティラウンジやギャラリー、スタジオなど、様々な機能を有するアートの複合施設です。名前の由来は、既存の概念とは異なる何かを示す“Alternative”と、多様なものを受け入れる“Box”からきています。
若手アーティストらの実験場として、他ではできない挑戦を行なっていく場を目指しているというこちらのスペース。3年間限定の場としてオープンしたそうですが、どのようなことが行われているのでしょうか?
4つの異なる視点の遭遇 オープニング展「ENCOUNTERS」
2020年10月11日(日)より、オープニング展「ENCOUNTERS」が開催されています。ここでは「予期せぬ『遭遇』から生まれる新しい創造」をテーマに、若手キュレーターたちが中心となって企画する4つの展覧会を開催。フロアごとに、都市、ストリート、エコロジー、パーティーといった全く違った視点から東京を捉えた展示が展開されています。
3F:NIGHT LIFE
Artist:Houxo Que, MES
Curator:西田編集長
ストリートやクラブカルチャーを出自とするHouxo Que, MESによる展示。MESは1988年の六本木ディスコ照明落下事故をテーマに、祭壇のようなDJブース、踏み固められ野焼きされた土、事故の慰霊碑がわりの地蔵をモチーフにした作品群を構成。壁面には、Houxo Queによるディスプレイからの発光と、その上に描かれたペインティングの蛍光の2種類の光が放たれる作品群が並びます。
4F:楕円のつくり方
Artist:スクリプカリウ落合安奈、長島有里枝、NAZE、マーサ・ナカムラ、松田将英、やんツー
Curator:布施林太郎、吉田山
「正円はひとつの中心を起点に描くことができるが、楕円を描くためにはふたつの起点が必要だ。だからこそ楕円のフォルムには歪さと同時に、多様な個性がある。」というステートメントのもと、「路上」と「家族」を起点に2人のキュレーターによって企画された展示。「キュレーター」と「アーティスト」という立場、アーティストの男女の比率、機械と人、2つの国籍など、様々な“2つの起点”を含んだ作品で構成されているような展示です。
6F:And yet we continue to breathe.
Artist:石毛健太、片山高志、喜多村みか、郷治竜之介、丹原健翔、林 千歩、山形一生
Curator:石毛健太、丹原健翔
階段からフロアに入るとまず目に入る土の山。それが、六本木で自生する植生が持ち込まれたものなのだそうです。六本木という場所は「土」「植物」といったイメージから遠くも感じられますが、「ビルの隙間や空き地に群生する植物を見やると、都市に生きる群衆の一人ひとりもまた、見落とされがちな存在であることを思う」と、そこにいる多くの人たちもまたこの植物と同様な存在であると示唆されているようです。
7F:SOURCE/ADIT: Studio TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH
Artist:顧剣亨、小林健太、小山泰介、谷口暁彦、田村友一郎、築山礁太、永田康祐、細倉真弓、 三野 新、吉田志穂、渡邉庸平
Curator:TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH
写真の機能や概念を拡張させながら、2020年代を迎えた「東京」を多面的に再解釈していくプロジェクト「TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH」。写真家だけでなく、現代美術家、建築家、メディアアーティスト、音楽家など、様々な表現者たちの視点を取り入れた映像と写真作品54点が入り混じります。
なお、この7Fフロアは、今後も「TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH」のスタジオとして使われていくとのこと。
フロアごとに違ったテーマであり、全く違った方向を向いているように見えつつも、様々な視点から見た「今の東京」を反映しているこの展覧会。それぞれの考えややりたいことを最優先しつつ、各フロアのキュレータ同士、キュレーターとアーティストの「対話」を何度も繰り返しながら作り上げられていったそうです。
世代やジャンルを超えた コミュニケーション・対話の先に目指すもの
こちらのスペースを運営するのは一般財団法人東京アートアクセラレーション。モバイルゲーム事業などを手がける株式会社アカツキの代表・香田哲朗さんと、東京都写真美術館や水戸芸術館で学芸員を勤められてきた山峰潤也さんが代表を務め、「アートを介して文化が息づくエコシステムを社会に醸成していくこと」を目指して設立されました。
共同代表のひとり山峰潤也さんは今回の試みについて、「世代やジャンルを超え、異なる方向性を持ったキュレーター・アーティストとのコミュニケーション・対話、そして実験的な取り組みを通じて、これまでにない“化学反応”を起こしていくことを目指している」と語ってくださいました。
こうした既存の枠組みをはみ出すような実験的な意識は、展覧会に先駆けて10月10日に開催されたオンライン配信ライブ&パフォーマンス「ENCOUNTERS×ENOCOUNTERS」にも色濃く反映されていました。
5名のミュージシャンが各フロアの展示会場で演奏を繰り広げ、1名のダンサーがフロアを縦断。それぞれの展示作品をテーマにパフォーマンスを行ない、その様子がライブ配信されました。
それは、単に展示空間をパフォーマンスの舞台として使うだけではなく、個々の作品もライブ映像作品の一部として組み込まれ、各フロアで別々に奏でられている音楽とパフォーマンスもその場で融合します。ライブ配信でありながら、その場のパフォーマンスとして見るのと、webを通じた映像で見るのとは違った魅力があり、まさに異なる既存のジャンルが融合し、新しい体験を生み出しているようでした。
「ENCOUNTERS」展は2020年11月8日までですが、その後も各フロアがゆるやかにつながる異なるアートスペースとして運営されていくそうです。3年間という限定された期間のなかで、どのようなことが行われていくのか、今後も期待のスペースです。
展覧会情報
ENCOUNTERS
展覧会公式サイト https://taa-fdn.org/events/486/
会場 ANB Tokyo 3F, 4F, 6F, 7F (港区六本木5丁目2-4)※六本木駅から徒歩3分
会期 2020年10月11日(日)~11月8日(日)
開催時間 12:00〜20:00(入場は19:30まで)
休館日 月・火
チケット 一般:1000円 中・高・大学生:入場無料 ※受付にて学生証要提示
入場方法 Peatix(事前予約制)
入場規制 10名/毎30分程度
・10/11(日)〜10/18(日)入場分チケット:https://encounters1011-1018.peatix.com/
・10/21(水)〜10/25(日)入場分チケット:https://encounters1021-1025.peatix.com/
・10/28(水)〜11/1(日)入場分チケット:https://encounters1028-1101.peatix.com/
・11/4(水)〜11/8(日)入場分チケット:https://encounters1104-1108.peatix.com/